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静岡の賃金と残業を県平均と比べる|毎月勤労統計と生成AI

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静岡の賃金と残業を県平均と比べる|毎月勤労統計と生成AI

「うちの給与は県内で見て高いのか低いのか」「残業時間は多いほうなのか」。賃上げを検討するとき、求人票を書き直すとき、金融機関に事業計画を説明するとき、この問いは必ず出てきます。そして多くの場合、手元にあるのは同業者との立ち話か、転職サイトが出している独自集計です。

静岡県には、これに答えるための公的な数字が毎月出ています。毎月勤労統計調査の地方調査結果です。県の統計活用課が毎月まとめて公表していて、誰でも無料で見られます。にもかかわらず使われていないのは、PDFと表計算ファイルの形で置かれているだけで、「自社と比べる」形になっていないからです。

この記事では、静岡県分の最新の数字を確認したうえで、自社の数字と突き合わせる手順と、その作業のどこまでを生成AIに任せてよいかを整理します。

この記事の要点

  • 静岡県の賃金・労働時間・雇用の動きは、毎月勤労統計調査の地方調査結果として県の統計活用課が毎月公表している。統計法に基づく基幹統計で、出典として使える。
  • 令和8年6月分では、1人平均月間定期給与が280,128円、名目賃金指数(定期給与)が110.9で前年同月比2.2%増。9か月連続で前年同月を上回った。
  • 実質賃金指数(定期給与)は95.9で前年同月比0.4%増。4か月ぶりに前年同月を上回った。
  • 1人平均月間所定外労働時間は10.1時間で前年同月比6.5%減。一方、常用労働者の約3割を占める製造業だけは13.5時間・前年同月比13.4%増と逆に動いている。
  • 自社の数字と比べる場面は、賃上げの検討・求人票・36協定と残業削減・社外への説明の4つ。生成AIは「表の形に整える」「説明文の下書き」までで、どの数字を採用するかは自社で決める。

毎月勤労統計の静岡県分は毎月公表されている

基幹統計として県の統計活用課がまとめている

毎月勤労統計調査は、労働者の雇用・給与・労働時間の動きを毎月明らかにすることを目的とした調査です。静岡県の統計センターしずおかは、この調査について「統計法(平成19年法律第53号)第2条第4項に規定する基幹統計」であり、雇用・給与・労働時間の静岡県における変動を毎月明らかにすることを目的としていると説明しています。

毎月勤労統計調査の3つの区分として、第一種事業所は常用労働者が30人以上、第二種事業所は5〜29人、特別調査は1〜4人であることを三段で示した図
規模でわかれる3つの調査区分

基幹統計であるということは、社内資料や金融機関向けの説明で「出典:静岡県統計活用課」と書ける、ということです。転職サイトの独自集計とは扱いが違います。

3つの区分で調べられている

調査対象は厚生労働大臣から指定された事業所で、規模によって3つに分かれます。

  • 第一種事業所:常用労働者が30人以上の事業所
  • 第二種事業所:常用労働者が5〜29人の事業所
  • 特別調査:常用労働者が1〜4人の事業所(毎年7〜9月に実施)

調査事項は、常用労働者数と異動状況、出勤日数、実労働時間数、現金給与額、賞与額などです。対象産業は建設業・製造業・情報通信業・運輸業・卸売業小売業・宿泊業飲食サービス業・医療福祉など幅広く、県内の中小企業の多くが「自分の業種が入っている」状態で読めます。

「5人以上・調査産業計」という前提を先に押さえる

公表される数字には必ず「事業所規模5人以上、調査産業計」といった但し書きが付きます。これは、5人以上の事業所を対象に、調査対象の全産業をまとめた平均値だ、という意味です。

ここを飛ばして数字だけを持ち出すと、社内で「うちは3人の部署だから当てはまらないのでは」という話になって止まります。資料の1行目に前提を書いておくのが結局いちばん早い進め方です。

令和8年6月分の静岡県の数字

県が2026年8月27日に公表した毎月勤労統計調査地方調査結果(令和8年6月分)から、主な数字を確認します。いずれも事業所規模5人以上、調査産業計の値です。

令和8年6月分の静岡県の数字として、1人平均月間定期給与280,128円、名目賃金指数110.9、実質賃金指数95.9、1人平均月間所定外労働時間10.1時間を、事業所規模5人以上・調査産業計という前提つきで並べた図
静岡県の最新値と、その前提

定期給与は280,128円、9か月連続で前年同月を上回った

1人平均月間定期給与(所定内給与+超過労働給与)は280,128円でした。名目賃金指数(定期給与)は110.9で、前年同月比2.2%増と9か月連続で前年同月を上回っています(令和8年6月分の概要)。

定期給与は賞与を含みません。月々の固定的な支給と残業代の合計、と読んでください。自社の数字と比べるときも、賞与を除いた月次の支給額で揃える必要があります。

実質賃金は4か月ぶりにプラスに戻った

実質賃金指数(定期給与)は95.9で、前年同月比0.4%増。4か月ぶりに前年同月を上回りました。

名目が2.2%増で実質が0.4%増、という差が物価の上昇分です。社内で賃上げを説明するとき、この2つを並べて出すと話が早くなります。「上げたのに生活が楽にならない」という従業員側の実感と、「上げている」という会社側の説明は、どちらも数字の上では成り立っているためです。

所定外労働時間は10.1時間、8か月連続で減っている

1人平均月間所定外労働時間は10.1時間、所定外労働時間指数は108.6で、前年同月比6.5%減と8か月連続で前年同月を下回りました。

月10.1時間は、1日あたりにすると30分前後です。自社の残業が月20時間なら県の平均のおよそ2倍、という比較ができます。ここは求人票を書くときにも、労使で残業削減の目標を置くときにも使える数字です。

製造業だけ所定外労働時間が増えている

13.5時間・前年同月比13.4%増

全体では所定外労働時間が8か月連続で減っている一方、製造業だけは逆に動いています。県の公表資料では、常用労働者の約3割を占める製造業の所定外労働時間は13.5時間、所定外労働時間指数は118.4で、前年同月比13.4%増と2か月ぶりに前年同月を上回った、と整理されています。

調査産業計の所定外労働時間が10.1時間で前年同月比6.5%減なのに対し、製造業は13.5時間で前年同月比13.4%増と向きが分かれていることを左右に並べた図
調査産業計と製造業で向きが分かれる

全体10.1時間に対して製造業13.5時間。差は3.4時間です。県全体の平均だけを見て「静岡の残業は減っている」と社内資料に書くと、製造業の現場の実感とずれます。

静岡の産業構成から読む

静岡県は輸送用機械が製造品出荷額の大きな部分を占め、富士の製紙、浜松の楽器、焼津・沼津の水産加工といった製造業の集積が県内各地にあります。富士市はパルプ・紙関連が市の出荷額の約3割を占め、市別では全国2位です(富士市「紙のまち」)。県のピアノは令和6年で出荷量29,656台・出荷額212億2,200万円と全国に占める割合が100%(静岡県「Myしずおか日本一」)、焼津漁港は水揚げ金額で全国1位が続いています(2025年460.1億円、焼津市)。製造業が常用労働者の約3割を占めるという県の記述は、この産業構成をそのまま映したものです。

つまり、静岡県で「県平均」を使うときは、製造業とそれ以外で挙動が分かれる前提で扱ったほうが実態に合います。県内の輸送機器サプライヤーが自社の残業時間を県平均と比べるなら、調査産業計の10.1時間ではなく製造業の13.5時間のほうが近い比較対象です。

月次の単発では判断しない

ただし、製造業の所定外労働時間の増加は「2か月ぶりに前年同月を上回った」という書き方がされています。前月までは下回っていた、ということです。

月次の統計は、受注のまとまり方や稼働日数の並びで上下します。1か月分だけを取り出して「増えている」と社内に説明すると、翌月の公表で話が引っくり返ります。少なくとも直近6か月を並べ、傾向として読んでください。この並べる作業が、次に説明する生成AIの出番です。

自社の数字と突き合わせる4つの場面

県の平均値は、眺めるだけでは何も変わりません。自社の数字と並べてはじめて判断材料になります。使いどころは次の4つです。

場面 県の数字 自社で用意する数字
賃上げの検討 定期給与280,128円/名目2.2%増・実質0.4%増 自社の月次平均支給額(賞与を除く)と直近の改定率
求人票の作成 定期給与と所定外労働時間10.1時間 募集職種の想定支給額と直近3か月の平均残業時間
36協定と残業削減 所定外10.1時間/製造業13.5時間 部門別の月次残業時間と繁忙月の上位3か月
社外への説明 名目・実質の両方と指数の推移 人件費の推移と、今後の計画値
自社の数字と県の平均値を突き合わせる場面として、賃上げの検討・求人票の作成・36協定と残業削減・社外への説明の4つを放射状に並べた図
県の平均値を自社の判断に使う場面

賃上げの検討は最低賃金の発効日と並べる

令和8年度の静岡県の地域別最低賃金は1,154円(前年度1,097円から57円の引き上げ)で、発効は2026年10月15日です(静岡労働局)。県平均の定期給与と自社の支給額を並べるときは、この発効日に間に合う改定かどうかも同じ表に入れておくと、賃金表の見直しが二度手間になりません。最低賃金側の段取りは静岡の最低賃金1,154円への対応にまとめています。

求人票は「残業時間」の行が効く

求人票を見る側が最初に確かめるのは、支給額と残業時間の2つです。県の平均が10.1時間だと分かっていれば、自社が8時間なら「県平均より少ない」と根拠付きで書けますし、18時間なら数字を隠すより「繁忙期は月◯時間、閑散期は月◯時間」と幅で書いたほうが後々のミスマッチが減ります。

求人の文面づくり全体は採用業務の生成AI活用6選で扱っています。

36協定の見直しは部門別で見る

全社平均が県平均を下回っていても、特定の部門だけが突出しているケースはよくあります。県の数字は全社平均との比較に使い、社内では部門別に並べてください。突出した部門が製造ラインなら、比較対象は製造業の13.5時間です。

生成AIに任せてよい工程と、自分で決める工程

この作業を全部手でやると、統計を開いて数字を拾い、表を作り、説明文を書くまでで半日が消えます。生成AIを挟めば1時間程度まで縮みますが、任せる範囲を間違えると使えない資料ができます。

生成AIに任せてよい工程として比較表の形を作る・言い回しの下書き・前提の但し書きが通り、自分で決める工程としてどの数字を採用するか・自社の平均支給額の算定方法・賃上げ率や残業削減の目標値が止まることを示した図
下書きに回す工程と自社で決める工程

任せてよい工程

  • 県の公表値と自社の数字を並べた比較表の形を作る
  • 指数の推移を文章で説明する言い回しの下書き
  • 社内向けの説明文(賃上げの案内、残業削減の依頼文)の下書き
  • 前提の但し書き(事業所規模5人以上、調査産業計、令和8年6月分)の定型文

自分で決める工程

  • どの数字を採用するか(調査産業計を使うか、製造業を使うか)
  • 自社の平均支給額の算定方法(対象者の範囲、手当の扱い)
  • 賃上げ率や残業削減の目標値
  • 社外に出す資料に載せるかどうかの判断

入れない情報

  • 従業員個人の氏名・給与額・評価
  • 取引先ごとの単価や原価の内訳
  • 未公表の経営数字

生成AIは統計の数字そのものを持っていません。県のPDFから自分で拾った値を渡して、形を整えてもらう。この順番を崩さないでください。数字を「調べて」と頼むと、それらしい別の値が返ってくることがあります。総務・人事の側で生成AIをどこまで使うかは経理・総務・人事の生成AI活用8業務と合わせて決めると早いです。

頼み方の例

次の数字を、社内会議用の比較表にしてください。表の上に「事業所規模5人以上、調査産業計、令和8年6月分」と1行入れてください。
県:1人平均月間定期給与 280,128円、名目賃金指数110.9(前年同月比2.2%増)、実質賃金指数95.9(同0.4%増)、所定外労働時間10.1時間(同6.5%減)、製造業の所定外労働時間13.5時間(同13.4%増)
自社:(ここに自社の値を入れる)
表の下に、差が大きい項目を2つだけ挙げて、それぞれ1文で説明を付けてください。

数字を先に固定して渡す。これだけで、出てくる表の精度がかなり変わります。

統計センターしずおかの他のデータと組み合わせる

同じ場所に並んでいるデータ

毎月勤労統計だけで足りない場面もあります。統計センターしずおかには、同じ場所に次のようなデータが並んでいます。

  • 静岡県景気動向指数:県内の景気の局面を見る指標
  • 静岡県鉱工業指数:製造業の生産の動き
  • 静岡県人口推計・静岡県年齢別人口推計:商圏や採用市場の前提
  • 静岡県統計年鑑:年次でまとまった各分野のデータ

組み合わせ方の例

賃金と残業の話をするとき、製造業の残業が増えている背景として鉱工業指数を並べる、採用計画の話をするとき年齢別人口推計を並べる、といった組み合わせ方ができます。どの相談先にどこまで持ち込めるかは静岡県のDX・AI支援窓口に整理してあります。

なお、厚生労働省の毎月勤労統計調査には全国の結果が出ています。県の公表資料には全国の結果も同時に添付されているため、県内・全国の両方を1か所で取れます。

最初の1時間でやること

6つの手順

  1. 県の毎月勤労統計調査地方調査結果のページを開き、最新月の概要PDFを保存する(5分)
  2. 概要から、定期給与・名目賃金指数・実質賃金指数・所定外労働時間・製造業の所定外労働時間の5つを書き写す(10分)
  3. 自社の直近3か月の平均支給額(賞与を除く)と平均残業時間を出す(20分)
  4. 2と3を生成AIに渡して比較表の形にしてもらい、前提の但し書きを1行目に入れる(10分)
  5. 差が大きい項目を2つ選び、社内で説明する文を下書きさせる(10分)
  6. 出てきた表の数字を、保存したPDFと1つずつ照合する(5分)

照合だけは省かない

最後の照合は省かないでください。生成AIが桁を落とす、単位を変える、前年同月比を前月比と書き換える、といったずれは実際に起きます。渡した数字とそのまま一致しているかだけを見れば、数分で済みます。

翌月以降は、更新された月の概要PDFを開いて2の5つを差し替えるだけです。2回目からは20分で終わります。

よくある質問

Q. 毎月勤労統計の静岡県分は、いつ公表されますか。
A. 月ごとに公表されます。令和8年6月分は2026年8月27日付で公表されました。おおむね2か月ほど遅れて出る、という間隔で見ておくと予定が立てやすくなります。

Q. 定期給与に賞与は入りますか。
A. 入りません。定期給与は所定内給与と超過労働給与の合計です。自社の数字と比べるときは、賞与を除いた月次の支給額で揃えてください。

Q. 従業員が3人の事業所ですが、この統計は使えますか。
A. 公表の中心は事業所規模5人以上の集計です。1〜4人規模については、毎年7〜9月に特別調査として別に実施されています。3人の事業所で県平均と比べる場合は、「5人以上の平均との比較」であることを資料に明記してください。

Q. 製造業の数字はどこに載っていますか。
A. 月ごとの概要資料に、産業別の動きの記述があります。令和8年6月分では、常用労働者の約3割を占める製造業の所定外労働時間が13.5時間、前年同月比13.4%増と記載されています。より細かい産業別の内訳は月報(PDFとエクセル)に収録されています。

Q. 生成AIに統計の数字を調べてもらってもよいですか。
A. 避けてください。数字は県の公表資料から自分で拾い、生成AIには「渡した数字を表や文章の形に整える」ことだけを頼んでください。最後にPDFと照合する手順まで含めて1つの作業だと考えると安全です。

Q. 自社の給与額を生成AIに入力しても大丈夫ですか。
A. 全社の平均値であれば、社内で決めた利用ルールの範囲で扱えます。個人が特定できる形(氏名付き、少人数部門の個別額)では入れないでください。誰が確認するか、出力をどこに保存するかを先に決めておくと迷いが減ります。

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参考・出典