この記事の要点
- 静岡県内の事業所が使う健康保険料率は、協会けんぽ静岡支部の令和8年度の率で9.61%です。令和7年度の9.80%から引下げになりました。
- 40歳から64歳までの人には、全国一律の介護保険料率1.62%が加わります。令和8年4月分(5月納付分)からは、全国一律の子ども・子育て支援金0.23%も加わります。
- 厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。健康保険も厚生年金も、事業主と本人が半分ずつ負担します。
- 保険料のもとになる金額は「標準報酬月額」です。毎年4月・5月・6月の報酬から決め直され(定時決定)、その結果は9月分から翌年8月分まで使われます。
- 昇給や降給で報酬が大きく動いたときは、定時決定を待たずに随時改定(月額変更届)の対象になることがあります。
秋になると「9月から手取りが変わったのはなぜか」という質問が総務に集まります。答えは、4月から6月の給与をもとに標準報酬月額が決め直され、その結果が9月分の保険料から使われるからです。この記事は、静岡県内の事業所が自社の数字を当てはめて確認できるように、率・等級・改定のタイミングを順番に整理したものです。
静岡県の社会保険料は「県ごとの率」と「全国一律の率」に分かれる
給与から引かれる社会保険料は、ひとつの率で計算されているわけではありません。都道府県ごとに違う率と、全国どこでも同じ率が重なっています。静岡県内の事業所が最初に押さえるのは、この分かれ目です。

健康保険料率は静岡支部の率を使う
協会けんぽの健康保険料率は、都道府県支部ごとに決まります。静岡支部の令和8年度の率は9.61%で、令和7年度の9.80%から引き下げられました(全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」)。適用は令和8年3月分(4月納付分)からです。
隣接する県と比べても率は同じではありません。同じ資料で、愛知県は9.93%、岐阜県は9.80%、長野県は9.63%、山梨県は9.55%です。県をまたいで事業所を持っている場合、事業所の所在地でどの支部の率を使うかが変わります。本社の率で全社をまとめて計算していないか、一度確認しておくと安全です。
介護保険料率と子ども・子育て支援金は全国一律
40歳から64歳までの人(介護保険第2号被保険者)には、上の健康保険料率に加えて、全国一律の介護保険料率1.62%が上乗せされます。さらに令和8年4月分(5月納付分)からは、全国一律の子ども・子育て支援金0.23%が加わります。いずれも同じ協会けんぽの資料に明記されている数字です。
つまり静岡県内では、40歳未満の人と40歳以上の人で、同じ給与でも引かれる額が変わります。誕生月をまたいだ月に「計算が合わない」という問い合わせが出やすいのはこのためです。
厚生年金保険料率は18.3%で動かない
厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。等級は第1級(8万8千円)から第32級(65万円)までの32等級で、事業主と被保険者が半分ずつ負担します(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。健康保険料率のように毎年度見直される数字ではないので、年度替わりに確認すべきは主に健康保険側の率だと整理できます。
保険料のもとになる「標準報酬月額」の決まり方
率が分かっても、かけ算の相手が分からなければ金額は出ません。その相手が標準報酬月額です。実際の給与額そのものではなく、幅のある区分(等級)に当てはめた金額を使います。

報酬に入るもの・入らないもの
標準報酬月額を決めるときの「報酬」には、基本給だけでなく、残業手当・通勤手当・住宅手当・役職手当のように、労働の対価として経常的に支払われるものが含まれます。一方で、年3回以下の賞与や、慶弔見舞金のように臨時に支払われるものは、月々の報酬には含めません(賞与は別に標準賞与額として扱われます)。
通勤手当を「実費だから報酬ではない」と扱ってしまう誤りは、静岡県内のように車通勤が多い地域でとくに起きやすい論点です。6か月分をまとめて支給している場合の月割りの扱いも含めて、自社の給与規程と照らして確認してください。
等級の上限は健康保険と厚生年金でずれる
厚生年金保険の等級は第32級(65万円)で頭打ちになります。これより報酬が高くても、厚生年金保険料は増えません。健康保険の等級表は厚生年金より上まで区分があるため、高い報酬帯では「健康保険料だけが上がり、厚生年金保険料は変わらない」という動き方をします。実際の等級と金額は、協会けんぽが都道府県ごとに公開している令和8年度保険料額表の静岡県の表で確認するのが確実です。
賃金の実額そのものの動きについては、静岡県の毎月勤労統計から賃金と残業時間を読む記事も合わせて見ると、自社の水準が県内でどのあたりかを掴みやすくなります。
9月分から改定される定時決定と、10月に手取りが変わる理由
社会保険料の金額が年に一度まとめて動くのは、定時決定という仕組みがあるからです。ここが一番よく聞かれるところなので、順番を分けて整理します。

4月・5月・6月の平均で決まる
定時決定は、7月1日現在で使用している全被保険者について、4月・5月・6月に受けた報酬の平均から標準報酬月額を決め直す手続きです。事業主が算定基礎届で届け出ます。決まった標準報酬月額は9月から翌年8月までの各月に適用されます(日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」)。
6月1日以降に資格取得した人、6月30日以前に退職した人、7月改定の月額変更届を出す人は、算定基礎届の提出対象から外れます。提出期限は毎年7月10日(土日の場合は翌営業日)です。
支払基礎日数17日(短時間労働者は11日)の数え方
平均を出すときに数えるのは、支払基礎日数が17日以上の月だけです。短時間労働者については、4月から6月のうち支払基礎日数が17日以上の月が1か月以上あれば、その月の報酬で決定します。特定適用事業所に勤務する短時間労働者は、11日以上で算定します。
この「どの月を数えるか」を取り違えると、平均額がまるごと変わります。月給制と日給制、欠勤控除がある月の扱いで迷いやすいので、給与計算ソフトの自動判定に任せきりにせず、対象月がいくつになったかを毎年確認しておくのが安全です。短時間労働者の適用範囲そのものについては、静岡県内の経理・総務業務を生成AIで整理する記事で扱った業務フローの棚卸しと合わせて見直すと漏れが減ります。
「9月分」と「10月に引かれる」がずれる
定時決定の結果は9月分の保険料から使われます。ただし、多くの会社は前月分の保険料を当月の給与から控除する運用のため、9月分の保険料は10月に支払う給与から引かれることになります。「9月から変わると聞いたのに、9月の給与明細は変わっていない」という問い合わせは、ほとんどがこのずれです。
自社がいつの給与から控除しているかは、給与規程や社内の運用ルールで決まります。社内向けの案内文を出す前に、当月控除か翌月控除かを必ず確認してください。
静岡県内の職場で起きやすいズレと随時改定
定時決定は4月から6月の3か月だけを見ます。そのため、この3か月がその年の平均的な働き方からずれている職場ほど、実感と保険料が合わなくなります。

4月から6月に業務が偏る職場ほど高く決まりやすい
静岡県は茶の栽培面積が全国1位(全国に占める割合34.7%)で、荒茶産出額も全国1位です(静岡県「Myしずおか日本一 茶」)。富士市のようにパルプ・紙関連が市の製造品出荷額の約3割を占める地域もあります(富士市「紙のまち 富士市」)。こうした季節や受注で作業量が動く業種では、春に残業が集中した年は標準報酬月額が高めに決まり、1年を通してその等級で保険料を負担することになります。
逆に、4月から6月がたまたま閑散期だった年は低めに決まります。どちらも制度どおりの結果なので、従業員への説明では「一時的に忙しかった月の残業が、1年分の等級に反映される仕組みである」ことを先に伝えておくと納得が得られやすくなります。
昇給・降給があったときは随時改定を確認する
年の途中で固定的賃金が変わった場合は、随時改定(月額変更届)の対象になることがあります。要件は3つあり、(1) 昇給または降給等により固定的賃金に変動があったこと、(2) 変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと、(3) 変動月以後引き続く3か月の報酬の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること、のすべてを満たす必要があります(日本年金機構「随時改定(月額変更届)」)。
改定後の標準報酬月額は、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目から適用されます。4月に支払われる給与に変動があった場合は7月からの適用です。3つの要件のうち「固定的賃金の変動」が起点なので、残業手当だけが増減した月は対象になりません。ここを取り違えて届出漏れや不要な届出が出やすいところです。
計算と説明文の下書きを生成AIに任せるときの手順
社会保険料の計算そのものは公表された率と等級表で決まるため、生成AIに「正解を出させる」使い方には向きません。向いているのは、条件を整理する作業と、社内向けの説明文を下書きする作業です。

手順は4つに分けられます。まず条件を書き出す、次に生成AIに下書きさせる、そのうえで保険料額表で検算する、最後に社内で確認する、という順番です。どの段階でも、個人情報は入れないことを前提にします。
入れてよい情報・入れてはいけない情報
外部の生成AIサービスに、氏名・生年月日・マイナンバー・個人が特定できる給与明細をそのまま貼り付けるのは避けてください。使うのは、架空の金額や、個人名を外した条件だけにします。たとえば「報酬月額32万円、40歳以上、静岡県内の事業所」といった形なら、個人を特定しない条件の整理として扱えます。
社内ルールの作り方は、静岡県内の企業向けに生成AIの社内ルールを整理した記事で扱った入力禁止情報の線引きをそのまま流用できます。
そのまま使えるプロンプトの型
説明文の下書きには、次のような指示の形が使いやすいです。
あなたは中小企業の総務担当です。以下の条件で、従業員向けのお知らせ文を400字程度で作ってください。専門用語には短い言い換えを添えてください。条件:(1) 9月分の社会保険料から標準報酬月額が改定される、(2) 当社は前月分を当月給与から控除しているため、変わるのは10月支給分から、(3) 決まり方は4月・5月・6月の報酬の平均による、(4) 金額の個別確認は総務窓口で受け付ける。
条件を箇条書きで渡し、文章のトーンと字数を指定するのがコツです。制度の説明をAIに「調べさせる」のではなく、こちらが確定させた事実を「読みやすく整える」用途に絞ると、事実誤りが混ざりにくくなります。
AIの出した金額を検算する
生成AIに金額を計算させた場合は、必ず協会けんぽの保険料額表と突き合わせてください。等級の境目、介護保険料率の加算の有無、労使折半の端数処理は、AIの出力で間違いが出やすい箇所です。等級表を見れば1分で確かめられるので、出力をそのまま社内に流さない運用を先に決めておきます。
静岡県内で確認するときの窓口
料率の確認は協会けんぽ静岡支部のページで行い、算定基礎届や月額変更届の届出の確認は日本年金機構のページと管轄の年金事務所で行います。保険料額表は都道府県ごとに分かれているため、静岡県の表をダウンロードして社内の共有フォルダに置いておくと、年度替わりの取り違えを防げます。

そのうえで、自社の控除タイミング(当月控除か翌月控除か)だけは公式資料では分かりません。就業規則・給与規程と、実際の給与明細の2つで確認してください。従業員からの質問のうち、制度の話と自社の運用の話を分けて答えられるようにしておくと、秋の問い合わせ対応がかなり楽になります。
よくある質問
Q. 静岡県の健康保険料率は令和8年度でいくらですか。
A. 協会けんぽ静岡支部の令和8年度の健康保険料率は9.61%です。令和7年度の9.80%から引き下げられ、令和8年3月分(4月納付分)から適用されています。40歳から64歳までの人には、全国一律の介護保険料率1.62%が加わります。
Q. 9月から変わると聞いたのに、9月の給与明細が変わっていません。
A. 定時決定の結果は9月分の保険料から使われますが、前月分を当月給与から控除している会社では、反映されるのは10月に支払う給与からになります。自社が当月控除か翌月控除かを給与規程で確認してください。
Q. 4月から6月にたまたま残業が多かった場合、翌年まで高いままですか。
A. 定時決定で決まった標準報酬月額は、原則として9月から翌年8月までの各月に適用されます。ただし、その後に固定的賃金の変動があり、3か月の平均から算出した標準報酬月額と2等級以上の差が生じ、3か月とも支払基礎日数の要件を満たす場合は、随時改定の対象になります。
Q. 賞与も標準報酬月額に含めるのですか。
A. 年3回以下の賞与は月々の報酬には含めず、標準賞与額として別に保険料がかかります。年4回以上支給される場合は報酬として扱われるため、自社の支給回数を確認してください。
Q. 県外に支店がある場合、どの率を使いますか。
A. 協会けんぽの健康保険料率は都道府県支部ごとに決まっており、適用は事業所の所在地によります。静岡県内の事業所と県外の事業所で率が異なるため、本社の率でまとめて計算していないか確認してください。
運営元 Uravation より自社に近い業務から着手先を選ぶ材料として、業務別の生成AI活用事例50例を無料で公開しています。 生成AI活用事例 業務別50選を受け取る(無料)
参考・出典
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」(静岡県9.61%・介護保険料率1.62%・子ども・子育て支援金0.23%/2026年9月29日確認)
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表(都道府県毎)」(2026年9月29日確認)
- 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」(適用期間・支払基礎日数・提出期限/2026年9月29日確認)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(保険料率18.3%・第1級8万8千円から第32級65万円/2026年9月29日確認)
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」(3要件・4か月目からの適用/2026年9月29日確認)
- 静岡県「Myしずおか日本一 茶」(栽培面積全国1位・全国に占める割合34.7%)
- 富士市「紙のまち 富士市」(パルプ・紙関連が市の製造品出荷額の約3割)