この記事の要点
会社案内や補助金の申請書に「静岡県の製造品出荷額は全国◯位」と書くとき、多くの人が古い数字を引いています。理由ははっきりしていて、長く使われてきた「工業統計調査」が2020年(令和2年)で終わり、いまは別の調査に引き継がれているからです。静岡県の統計センターしずおかは、工業統計調査について「2020年(令和2年)工業統計調査をもって中止され、令和4年調査からは経済構造実態調査に包括され、国の直轄調査として実施されている」と案内しています。県が公表している数値では、静岡県の製造品出荷額等は19兆291億円、全国3位、全国比5.3%です。この記事では、目的別にどの統計表を開けばよいかの早見表と、数字の説明文を生成AIに書かせるときの線引きをまとめます。
「工業統計調査」は2020年で終わっている
古い数字が資料に残り続ける原因の多くは、検索で最初に出てくるページが工業統計調査の時代のものだからです。統計センターしずおかのよくある質問では、市区町別・産業中分類別の事業所数、従業者数、製造品出荷額等、原材料使用額等を調べる方法として「工業統計調査」と「経済センサス-活動調査」の統計表(市町編)が案内され、そのうえで工業統計調査が2020年(令和2年)で中止され、令和4年調査から経済構造実態調査に包括された旨が明記されています。

つまり、いま最新の数字を探すなら、見に行く先は「静岡県の工業 統計表」ではなく、経済構造実態調査(製造業事業所調査)の静岡県統計表です。県のページは2026年8月14日に更新されており、2024年調査分として第1表から第19表までが公開されています。
「工業統計」という言葉自体は残っている
紛らわしいのは、県のサイトに工業統計調査のページが過去分の入り口として残っていることです。過去との比較で使うぶんには問題ありませんが、最新値として引用してしまうと年次が数年ずれます。資料に数字を載せるときは、金額だけでなく「どの調査の、どの年の値か」を必ずセットで控えてください。
どの数字を引くかの早見表
目的によって開く表が変わります。県の統計表は番号で整理されているので、下の対応を控えておくと探す時間が短くなります。
| 資料に書きたいこと | 開く表 | 収録内容 |
|---|---|---|
| 県全体の金額と業種別の内訳 | 第1表 | 産業分類中分類別・年次別の事業所数、従業者数、製造品出荷額等(全事業所) |
| 細かい業種まで分けたい | 第3表 | 産業分類細分類別の事業所数、従業者数、現金給与総額、原材料使用額等、製造品出荷額等、粗付加価値額(全事業所) |
| 市町別に比べたい | 第10表 | 市区町別・年次別の事業所数、従業者数、製造品出荷額等(全事業所) |
| 市町×業種で見たい | 第12表 | 市区町別・産業分類中分類別の事業所数、従業者数、現金給与総額、原材料使用額等、製造品出荷額等、粗付加価値額(全事業所) |
| 製品の品目で見たい | 第18表 | 品目別製造品出荷額及び産出事業所数(全事業所) |

県全体の金額と全国順位を出すとき
会社案内や学校向けの資料でよく使う「静岡県は全国◯位」という表現は、県が公表している全国順位の資料が出典として扱いやすい形になっています。金額と順位と全国比の3点をまとめて確認できるためです。順位だけを書くと読み手が規模感をつかめないので、金額と全国比を添えるのが親切です。
市町別・業種別を出すとき
浜松市の輸送用機械、富士市の紙・パルプのように、市町と業種を組み合わせて語りたい場合は第12表が該当します。ただし、事業所数の少ない市町と業種の組み合わせでは、個別の事業所の数値が推定できてしまうことを避けるため公表されない欄があります。空欄が出たときは「データがない」のではなく「公表されていない」と書き分けてください。
品目で見るとき
自社製品に近い品目の出荷額を探すときは第18表です。品目の分類名は日常の商品名とは違うので、社内で使っている呼び方と分類名の対応を一度つくっておくと、翌年以降の更新が速くなります。
静岡県の位置づけは19兆291億円・全国3位
県が公表している資料では、静岡県の製造品出荷額等は19兆291億円、全国は361兆7,749億円、順位は3位、全国比は5.3%です。資料の出典は総務省・経済産業省「2023年経済構造実態調査 製造業事業所調査結果」と明記されています(静岡県 統計センターしずおか「製造品出荷額等」)。

令和3年から令和4年への推移
推移としては、令和3年が17兆2,905億円(全国比5.2%)、令和4年が19兆291億円(全国比5.3%)と示されています。上位10都道府県は次のとおりです。
| 順位 | 都道府県 | 出荷額等(億円) | 構成比(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | 愛知県 | 524,098 | 14.5 |
| 2 | 大阪府 | 202,489 | 5.6 |
| 3 | 静岡県 | 190,291 | 5.3 |
| 4 | 兵庫県 | 183,403 | 5.1 |
| 5 | 神奈川県 | 182,318 | 5.0 |
| 6 | 千葉県 | 158,925 | 4.4 |
| 7 | 茨城県 | 148,596 | 4.1 |
| 8 | 埼玉県 | 147,998 | 4.1 |
| 9 | 三重県 | 118,668 | 3.3 |
| 10 | 広島県 | 106,923 | 3.0 |
3位から5位は1兆円弱の範囲に並んでいる
この表で注意したいのは、2位の大阪府と3位の静岡県の差が約1兆2,000億円である一方、3位から5位までは1兆円弱の範囲に並んでいることです。順位は年によって入れ替わりうる近さなので、「全国3位」という表現を数年使い回さず、更新のたびに確認してください。なお、この資料は2023年経済構造実態調査にもとづく値です。2024年調査の結果は県の統計表ページに公開されているため、より新しい年次で語りたい場合はそちらを開いてください。
浜松・静岡・富士の産業構成を資料に落とすときの注意
静岡県は静岡市と浜松市という2つの政令市を持ち、産業の性格も地域ごとに違います。県全体の数字だけで語ると、実感と合わない資料になります。

地域ごとに主な業種が違う
浜松市を含む西部は輸送用機械の比重が高く、自動車・二輪の部品供給網が広がっています。富士市は紙のまちとして知られ、パルプ・紙関連が市の製造品出荷額の約3割を占め、市別では全国2位とされています(富士市「富士市の紙産業」)。静岡市は模型・プラモデルの集積で知られます。同じ「静岡県の製造業」でも、どの市町の話かで構成がまったく変わるということです。
事業所数と従業者数も並べる
市町別の資料をつくるときは、第10表で事業所数・従業者数・製造品出荷額等の3つを並べるのが分かりやすい形です。出荷額だけを並べると大型設備を持つ業種の市町が突出し、雇用の厚みが見えなくなります。従業者数を並べておくと、「金額は大きいが人は多くない」「金額は中位だが雇用は厚い」といった地域の性格まで読めます。
県と市で年次がそろっているか確かめる
県や市の施策と結びつける場合は、県の統計と市の公表資料で年次がそろっているかを確認してください。県の統計表が2024年調査であるのに市の紹介ページが数年前の値、ということはよくあります。年次が違うもの同士を1枚のスライドに並べると、それだけで資料の信頼性が落ちます。
生成AIに任せる部分と、任せない部分
統計を使った資料づくりで生成AIが効くのは、数字を探す工程ではなく、探して確定させた数字を「説明する」工程です。

任せてよいのは説明する工程
任せてよいのは、確定した数値を渡したうえでの説明文の下書き、同じ数字を社内向け・取引先向け・採用向けに言い換える作業、表の見出しの整え、グラフに添えるキャプションづくりなどです。「19兆291億円、全国3位、全国比5.3%、2023年経済構造実態調査」という材料を渡して、200字の紹介文を3パターン書かせる、といった使い方が現実的です。
数字そのものを思い出させない
任せてはいけないのは、数字そのものを思い出させることです。統計の値や順位を生成AIに直接聞くと、年次の違う値や存在しない値がそれらしい形で返ってくることがあります。しかも出典まで添えてくるので、確認しないまま資料に入ってしまいます。数字は必ず県や国の公表ページから人が取り、生成AIには材料として渡してください。
もうひとつ、年次と出典を本文に書かせる指示を毎回入れておくことをおすすめします。「出典と年次を必ず文中に入れること」と一行足すだけで、あとで更新するときに何を差し替えればよいかが自分で分かる文章になります。
数字の説明文を書かせるときのプロンプトの形
【材料】静岡県の製造品出荷額等 19兆291億円/全国 361兆7,749億円/全国3位/全国比5.3%
出典:総務省・経済産業省「2023年経済構造実態調査 製造業事業所調査結果」(静岡県公表資料より)
【前提】県外の取引先に渡す会社案内の冒頭で、静岡県の製造業の規模を説明します。
【出力】200字程度。出典名と年次を必ず文中に入れてください。
材料にない数字・順位・企業名は書かないでください。分からない点は「—」と書いてください。
「材料にない数字は書かない」「分からないところは—と書く」の2行が、統計資料では特に効きます。この2行がないと、空いた部分を埋めようとしてもっともらしい数字が足されます。出てきた文章は、金額・順位・年次・出典名の4点だけを元のページと突き合わせてから使ってください。
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よくある質問
Q. 工業統計調査と経済構造実態調査は、どちらを使えばよいですか。
最新値は経済構造実態調査です。統計センターしずおかは、工業統計調査が2020年(令和2年)で中止され、令和4年調査から経済構造実態調査に包括されたと案内しています。工業統計調査の統計表は過去との比較に使ってください。
Q. 静岡県の製造品出荷額等はいくらですか。
県が公表している資料では19兆291億円、全国3位、全国比5.3%です。出典は総務省・経済産業省「2023年経済構造実態調査 製造業事業所調査結果」と明記されています。より新しい年次で語りたい場合は、県の2024年調査の統計表を開いてください。
Q. 市町別の数字はどこで見られますか。
静岡県の経済構造実態調査(製造業事業所調査)統計表の第10表が市区町別・年次別の事業所数、従業者数、製造品出荷額等、第12表が市区町別・産業分類中分類別の内訳です。
Q. 表の欄が空いているのはなぜですか。
事業所数が少ない市町と業種の組み合わせでは、個別の事業所の数値が推定できてしまうため公表されない欄があります。資料では「データなし」ではなく「非公表」と書き分けてください。
Q. 統計の数字を生成AIに聞いてもよいですか。
数字を思い出させる用途には向きません。年次の違う値やない値が出典付きで返ることがあります。数字は公表ページから人が取り、生成AIには説明文の下書きの材料として渡してください。
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参考・出典
- 静岡県 統計センターしずおか「市町別に製造業の産業分類別、製造品出荷額等、原材料使用額等を知りたいのですが」(2026年9月21日閲覧)
- 静岡県 統計センターしずおか「2024年経済構造実態調査(製造業事業所調査)統計表」(2026年8月14日更新・2026年9月21日閲覧)
- 静岡県 統計センターしずおか「製造品出荷額等(静岡県の全国順位)」(2026年9月21日閲覧・PDF)
- 静岡県 統計センターしずおか「工業統計調査」(2026年9月21日閲覧)
- 経済産業省「経済構造実態調査」(2026年9月21日閲覧)
- e-Stat 政府統計の総合窓口「経済構造実態調査 品目編 都道府県別出荷金額」(2026年9月21日閲覧)
- 富士市「富士市の紙産業」(2026年9月21日閲覧)