この記事の要点
静岡県の中小企業向け補助金は、県公式サイトの「企業支援(助成・融資)」から5つの入口に分かれていて、主力は経営支援課が所管する中小企業等収益力向上事業費補助金です。2026年度(令和8年度)は通常枠とDX推進枠の募集が4月1日と6月1日の2回で、いずれも受付を終えています。補助率は1/2以内が基本で、3.5%以上の賃上げに取り組む事業者は2/3以内に上がり、上限額も通常枠500万円が700万円、DX推進枠700万円が1,000万円になります。小規模事業者は商工会・商工会議所経由の小規模企業経営力向上事業費補助金が入口で、こちらも2次募集まで終了しています。今から申し込めるのは副業・兼業人材確保事業費補助金と、無料のAI・IoT導入促進事業です。県の補助金は春に集中して閉まるので、秋から冬にかけては経営革新計画の承認とGビズIDの取得を先に済ませ、事業計画の骨子を用意しておくのが来年度への現実的な準備です。
静岡県の補助金ページは5つの入口に分かれている
県の補助金を探すとき、多くの人が「静岡県 補助金」で検索して迷います。県公式サイトの静岡県「企業支援(助成・融資)」を開くと、入口は5つに分かれています。「支援・補助金(経営支援課)」「中小企業の経営革新支援制度」「中小企業向け制度融資」「農業・水産業支援」「支援・補助金(商工振興課)」の5つです。どの入口を開くかで、出てくる制度がまったく違います。

経営支援課の「支援・補助金」が中小企業の主戦場
一般的な中小企業が使う補助金は、経営支援課「支援・補助金」にまとまっています。並んでいるのは、中小企業等収益力向上事業費補助金(通常枠及びDX推進枠)、同(賃上げ環境整備)、同(成長加速化枠)、小規模企業経営力向上事業費補助金の申請手続き、収益力向上事業費補助金の採択後の様式、の5項目です。つまり県の中小企業向け補助金は、事実上「収益力向上」と「小規模企業経営力向上」の2系統に集約されています。
商工振興課は臨時枠の置き場
もう一つの商工振興課「支援・補助金」には、被災中小企業再建支援事業費補助金と、令和7年度の中小企業等収益力向上事業費補助金(米国関税対応枠)の再募集と採択後の様式が並びます。米国関税対応枠は「募集終了」の表示です。ここは災害や経済環境の急変に応じて臨時に設けられる枠の置き場と考えると、見落としが減ります。過去の支援金・補助金の一覧も同じページから辿れます。
経営革新支援制度と制度融資は補助金ではありませんが、後で説明するとおり補助金の採択率と直結するので、入口として覚えておいてください。
主力は収益力向上事業費補助金|4つの枠の早見表
中小企業等収益力向上事業費補助金は、県内に主たる事務所または主たる事業所を持つ中小企業者等を対象に、収益力や生産性の向上につながる新たな事業を支援する制度です。2026年度は通常枠、DX推進枠、賃上げ環境整備、成長加速化枠の4つの名前で県のページに載っています。
通常枠とDX推進枠は賃上げ要件で率と上限が変わる
県の静岡県「中小企業等収益力向上事業費補助金(通常枠及びDX推進枠)」と、運営主体である静岡県産業振興財団「令和8年度中小企業等収益力向上(賃上げ環境整備)事業費補助金について」によると、2026年度の枠組みは次のとおりです。
- 通常枠:補助対象経費の1/2以内、上限500万円。賃上げ要件に該当すると2/3以内、上限700万円
- DX推進枠:1/2以内、上限700万円。賃上げ要件に該当すると2/3以内、上限1,000万円
- 下限額は両枠とも50万円
- 賃上げ要件:令和7年4月以降から補助対象期間の終了までに、3.5%以上の賃金引上げを実施していること
- 公募期間:第1次 2026年4月1日10時から5月15日17時、第2次 6月1日10時から6月30日17時
- 応募方法:補助金申請システム「Jグランツ」。GビズIDプライムアカウントの取得が必須
対象経費は専門家謝金、旅費、原材料費、機械装置費、産業財産権導入費、委託・外注費、展示会出展費、調査研究費、広報費、通訳・翻訳料などで、県ページには15項目が並びます。生成AIやクラウドの利用料そのものが対象になるかは、経費区分ごとに公募要領で確認する必要があります。
2026年度は事業期間が1年、伴走支援は必須ではない
県経営支援課が2026年3月19日付でまとめた静岡県商工業局経営支援課「令和8年度中小企業等収益力向上事業費補助金の概要」(2026年3月19日)には、前年度からの変更点が5つ挙がっています。国の重点支援地方交付金を使うため補助事業の完了期限が令和8年12月31日になり、事業期間は1年に短縮されました。伴走支援は必須ではなくなり、伴走支援機関の「伴走支援表明書」を出せば審査で加点されます。賃上げは加点ではなく補助率と上限額の優遇に変わり、通常枠でも機械装置費のみの申請が可能になりました。運営主体は県から静岡県産業振興財団に移っています。
賃上げ要件について、この県資料では「令和7年3月から補助事業完了まで」と書かれ、財団のページでは「令和7年4月以降」と書かれています。起点の月が1か月ずれているので、応募時は公募要領の記載を必ず確認してください。
成長加速化枠は100億宣言企業向け
静岡県「中小企業等収益力向上事業費補助金(成長加速化枠)」(2026年9月4日更新)は、売上高100億円超の企業創出を目指す「100億宣言企業」として登録した中小企業等が対象です。2026年度の公募は7月6日から7月21日で終了し、応募39件に対して採択7件、採択率17.9%でした。採択企業の取組例として自動化ラインの構築、精密加工機の導入、電動車部品製造への対応が挙がっています。事務局は静岡100億企業創出促進協議会で、一般の枠とは窓口が別です。
経営革新計画の承認があると採択率が大きく違う
県の補助金を読むうえで、いちばん見落とされているのがこの数字です。先ほどの県経営支援課の概要資料(2026年3月19日)によると、令和7年度の中小企業等収益力向上事業費補助金は応募178件、採択107件でした。このうち経営革新計画の承認を受けていたものは応募93件、採択79件で、採択率84.9%です。承認を受けていない案件は応募85件、採択28件で、採択率32.9%でした。

なぜ承認済みの案件が通りやすいのか
県の資料は理由を2つ挙げています。ひとつは、承認された経営革新計画に基づく事業が「大きな審査加点対象」であること。もうひとつは、承認の過程で現状や課題の分析ができているため、事業計画の内容が充実していて審査でも高評価になることです。2026年度は賃上げ加点が廃止され、伴走支援加点が追加されましたが、経営革新加点は「特に大きな加点」として継続予定と明記されています。
承認は補助金の前年に取っておく
経営革新計画は県知事の承認制度で、申請から承認までに審査の期間があります。春の公募に間に合わせるには、秋から冬のうちに申請しておく必要があります。申請書の下書きに生成AIを使う手順は経営革新計画の申請書を生成AIで下書きする手順で整理しています。
小規模事業者は「小規模企業経営力向上事業費補助金」から
従業員の少ない事業者は、収益力向上より先にこちらを見てください。静岡県「小規模企業経営力向上事業費補助金の申請手続き」によると、県内の小規模事業者が「新たな需要の開拓」または「生産性の向上」を目指して行う工夫・改善の取組に要する経費が対象です。2026年度の募集は、1次が3月2日から4月20日、2次が5月11日から6月22日で、いずれも終了しています。

申請は最寄りの商工会・商工会議所を通す
この補助金は県に直接出すのではなく、最寄りの商工会または商工会議所を通じて申請します。静岡県商工会連合会「静岡県小規模企業経営力向上事業費補助金」によると、補助率は2/3以内、上限額は50万円で、対象経費は開発費、機械装置費等(ITソフトウェアを含む)、広報費、外注費などです。要件として、自社で新規に実施するか既存事業の大幅な改善であること、経営革新計画の承認を目指す3年間のビジョンを策定することが挙がっています。物価高騰枠と賃金引上げ枠は過去の受給実績が必要です。
小さな補助金でも「経営革新計画」につながっている
上限50万円の補助金でも、要件に「経営革新計画の承認を目指す3年間のビジョン」が入っているところがポイントです。小規模の補助金で計画を作る練習をし、翌年に経営革新計画の承認を取り、その翌年に収益力向上の補助金を高い採択率で狙う。県の制度はこの順番でつながるように設計されています。問い合わせ先は県経営支援課(電話054-221-2807)と、静岡県商工会連合会産業振興課(電話054-255-9811)です。
補助金以外の県の支援メニュー|今から申し込めるもの
補助金の主力が春に閉まる一方で、秋の時点でも動いている県の支援があります。

副業・兼業人材確保事業費補助金は年度末まで受け付けている
静岡県「副業・兼業人材確保事業費補助金(令和8年度)」(2026年6月18日更新)は、県内に主たる事業所を持つ常時従業員数1,000人未満の会社、個人事業主、組合等が、県内外の副業・兼業人材を受け入れるときの人材紹介手数料、報酬、県外人材の旅費の一部を助成する制度です。過去に拠点を通した副業・兼業人材の活用を行ったことがない中小企業等による初回の実施が対象で、補助率は10分の8以内、1人当たり50万円が上限です。令和9年2月28日までに事業を完了することが条件で、交付申請は従事開始日の2週間前までに提出します。AI導入の推進役を社外の副業人材に任せたい会社には、使いやすい制度です。問い合わせは県産業人材課(電話054-221-2825)です。
中小企業AI・IoT導入促進事業は無料メニューが中心
静岡県「中小企業AI・IoT導入促進事業」(2026年8月25日更新)には、お金を出す補助金ではなく、相談と学びの場が並んでいます。AI・IoT導入推進コンソーシアムは静岡大学、県工業技術研究所、産業振興財団、浜松地域イノベーション機構が実施主体で、会員加入は無料、随時受付です。AI・IoTアドバイザーは製造現場の課題診断と伴走支援、AI・IoT推進ラボは静岡・沼津・浜松の工業技術研究所で最新技術を体験できる場です。令和8年度のIoT大学連携講座(受講料36,300円)は申込を終えていて、第2部の現場実装講座が9月10日の実習と1月26日の発表会に進んでいます。問い合わせは県産業イノベーション推進課(電話054-221-2609)です。
シズオカ×AI チャレンジは2026年度の新規事業
静岡県「静岡県AIソリューション開発等支援事業『シズオカ×AI チャレンジ』」は、AI事業者と県内企業の協業で新しいソリューションを開発・実証する2026年度の新規事業です。AI事業者のアイデア募集が7月31日まで、県内企業の協業希望の受付が9月4日までで、マッチングと審査を経て3件を選び、11月から2027年3月15日にかけて実施します。今年度の募集は閉まっていますが、県が「AI事業者と県内企業を組ませて補助する」型の事業を始めたことは、来年度以降の県の補助金の方向を読むうえで押さえておく価値があります。
年間カレンダーで読む|秋から冬にやること
県の補助金は年度単位で動きます。制度名や上限額を覚えるより、時期の型を覚えたほうが実務では役に立ちます。

4月に一斉に始まり6月末までに閉まる
2026年度の実績で並べると、小規模企業経営力向上が3月2日から始まり6月22日で閉じ、収益力向上の通常枠とDX推進枠が4月1日の1次募集で始まり6月30日の2次募集で閉じ、成長加速化枠が7月6日から21日、浜松市の浜松市「令和8年度浜松市中小事業者等AIエージェント導入支援事業費補助金」(2026年4月20日更新)も4月20日から5月29日でした。県と市の主力補助金は、3月から7月の間にほぼ全部が始まって閉まる構造です。9月に「県の補助金を探そう」と思い立った会社は、今年度分ではなく来年度分を狙うのが現実的です。
秋から冬は経営革新計画とGビズIDを先に済ませる
来年度の4月に応募するために、今から必要な準備は3つです。1つ目は経営革新計画の承認申請で、これは採択率の差がいちばん大きい要素です。2つ目はGビズIDプライムアカウントの取得で、県資料には「取得に数週間かかる場合もある」と明記されています。3つ目は賃上げの計画で、3.5%以上の賃金引上げに取り組むかどうかを、決算と最低賃金の改定日程を見ながら決めておきます。県の補助金の相談先は静岡県のDX・AI支援窓口の選び方にまとめています。
事業計画の下書きに生成AIを使うときの線引き
事業計画は「現状」「課題」「打ち手」「効果」の4ブロックで組むと審査員に伝わります。生成AIには、自社の売上構成や工程の現状を箇条書きで渡し、課題と打ち手の文章化を手伝わせるのが向いています。ただし、取引先の名前、原価や粗利の細かい数字、従業員の個人情報は入力しません。公募要領の要件を満たしているかの最終判断と、数字の裏付けは人が行います。県資料に「経営革新計画の承認の過程で現状や課題分析ができている案件は事業計画の内容が充実している」とあるとおり、審査で見られているのは文章のうまさではなく分析の中身です。
市の制度と国の制度との使い分け
県の補助金だけで足りない場合は、市の制度と国の制度を組み合わせます。国のデジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、人材開発支援助成金と、静岡市・浜松市の制度は静岡のAI導入補助金5選で整理しています。省力化投資補助金の一般型は第8回の申請締切が10月16日で、こちらは秋に動いている数少ない制度です。詳しくは省力化投資補助金一般型の申請準備を参照してください。
研修の費用は補助金ではなく助成金の領域で、人材開発支援助成金の対象となる場合があります(要件審査あり・支給を保証するものではありません)。県の補助金で設備やシステムを入れ、国の助成金で使う人の研修をする、という分け方が基本です。自社がどの制度に当てはまるかの整理はお問い合わせからも受け付けています。
よくある質問
Q. 収益力向上事業費補助金は、今年度もう一度募集がありますか
県ページと財団ページに載っている2026年度の募集は第1次と第2次の2回で、いずれも終了しています。第3次の告知は2026年9月19日時点で県のページにありません。過去には米国関税対応枠のように臨時の枠が商工振興課のページに出た例があるので、経営支援課と商工振興課の両方のページを月に1回見るのが確実です。
Q. 経営革新計画の承認がないと応募できませんか
応募はできます。県資料では、補助対象事業は「承認された経営革新計画に基づく事業」と「収益力や生産性の向上につながる自社にとって新たな事業」の2つです。ただし令和7年度の採択率は承認あり84.9%、承認なし32.9%と差が大きいので、来年度に応募するなら承認を先に取るほうが有利です。
Q. DX推進枠と通常枠はどちらに出せばよいですか
DX推進枠はデジタル技術の活用が要件で、上限額が通常枠より高く設定されています。生成AIやシステムの導入が中心なら DX推進枠、機械装置の導入が中心なら通常枠が目安です。2026年度から通常枠でも経費区分が機械装置費のみの申請が可能になっています。
Q. 賃上げ要件の3.5%は誰の賃金ですか
県資料では「従業員平均賃金」と書かれています。応募時に未実施でも、補助事業完了までに引き上げる場合は賃金引上げの表明が必要で、完了までに要件を満たさなかった場合は補助率と上限額の優遇が適用されません。起点の月の表記が県資料と財団ページで異なるので、公募要領で確認してください。
Q. 生成AIの利用料は県の補助金の対象になりますか
県ページの対象経費は謝金、旅費、原材料費、機械装置費、委託・外注費、展示会出展費、調査研究費、広報費など15項目で、月額の利用料が単独で対象になるかは公募要領の経費区分の定義によります。2026年9月時点で県のページに利用料の扱いの明記はありません。応募前に事務局(電話0570-056106)で確認してください。
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参考・出典
- 静岡県「企業支援(助成・融資)」
- 静岡県経営支援課「支援・補助金」
- 静岡県商工振興課「支援・補助金」
- 静岡県「中小企業等収益力向上事業費補助金(通常枠及びDX推進枠)」
- 静岡県「中小企業等収益力向上(賃上げ環境整備)事業費補助金」(2026年8月3日更新)
- 静岡県商工業局経営支援課「令和8年度中小企業等収益力向上事業費補助金の概要」(2026年3月19日)
- 静岡県産業振興財団「令和8年度中小企業等収益力向上(賃上げ環境整備)事業費補助金について」
- 静岡県「中小企業等収益力向上事業費補助金(成長加速化枠)」(2026年9月4日更新)
- 静岡県「小規模企業経営力向上事業費補助金の申請手続き」
- 静岡県商工会連合会「静岡県小規模企業経営力向上事業費補助金」
- 静岡県「副業・兼業人材確保事業費補助金(令和8年度)」(2026年6月18日更新)
- 静岡県「中小企業AI・IoT導入促進事業」(2026年8月25日更新)
- 静岡県「静岡県AIソリューション開発等支援事業『シズオカ×AI チャレンジ』」
- 浜松市「令和8年度浜松市中小事業者等AIエージェント導入支援事業費補助金」(2026年4月20日更新)