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静岡県と静岡市・浜松市の生成AI導入状況|自治体が始めた手順

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静岡県と静岡市・浜松市の生成AI導入状況|自治体が始めた手順

この記事の要点

静岡県内の自治体は、生成AIの導入で全国の先頭集団にいます。県庁は2023年6月にガイドラインを作り、RAG機能を持つ「exaBase」を入れ、2026年度は全職員にAIアカウントを配って年4万時間の業務削減を目標に掲げました。静岡市は2025年11月末に選抜した300人へ「Microsoft 365 Copilot」を本導入し、年間約3万5千時間の削減効果を確認したうえで、2026年7月1日から全職員に「自治体AI zevo」と職員向けFAQシステムを展開しています。浜松市はDX推進計画で生成AIの利用職員数を指標にし、2029年度に2,000人を目指します。総務省の調査では、生成AIを導入済みの団体は都道府県で87.2%、指定都市で90.0%、その他の市区町村で29.9%です。県内には35の市町があり、政令市以外の導入状況は市町ごとに差があります。自治体が踏んだ「ルールを決める、少人数で試す、全員に広げる、時間で測る」という順番は、そのまま中小企業の導入手順として使えます。

全国の自治体で生成AIはどこまで入っているか

自治体の数字は、中小企業が自社の位置を測る物差しになります。総務省が公表している総務省「自治体における生成AI導入状況」(令和7年6月30日版)は、令和6年12月31日現在の調査をまとめたものです。

左から都道府県の隣に87.2%、指定都市の隣に90.0%、その他の市区町村の隣に29.9%を置いた3列の図
生成AIを導入済みの団体の割合(総務省 令和6年12月31日現在)

都道府県は87.2%、その他の市区町村は29.9%

生成AIを導入済みの団体は、都道府県で87.2%、指定都市で90.0%、その他の市区町村で29.9%でした。実証中と導入予定を含めると、都道府県と指定都市は100%、その他の市区町村は51%が導入に向けて取り組んでいます。静岡市と浜松市は指定都市に入るので、県内の2つの政令市は「9割が導入済み」の側にいます。一方で、県内の残りの市町が属する「その他の市区町村」は3割です。県内の自治体が一枚岩で進んでいるわけではない、という前提が大事です。

使い道の上位は「あいさつ文案」「議事録の要約」「企画書案」

同じ資料で、導入している生成AIの活用事例は回答の多い順に「あいさつ文案の作成」875件、「議事録の要約」755件、「企画書案の作成」638件、「メール文案の作成」635件でした。自治体が最初に生成AIを当てているのは、文章を書く仕事です。中小企業で最初に効果が出る仕事と同じで、特別な業務ではありません。

課題の1位は人材不足、ガイドラインは未策定が1,004団体

導入の課題は「取り組むための人材がいない又は不足している」549件、「AI生成物の正確性への懸念がある」522件、「導入効果が不明」471件の順です。生成AI利用のガイドラインは「策定済」647団体に対して「未策定」1,004団体で、未策定が最も多くなっています。ただし導入済みの団体に限ると82.7%が策定済です。導入している自治体は、ほぼ例外なくルールを先に作っています。

静岡県庁|ガイドラインから全職員アカウントまでの3年

県庁の動きは、2023年から2026年にかけて3段階で進んでいます。

ガイドラインを策定、exaBaseを導入、RAG機能の検証、全職員にAIアカウントを配布、の4段階が左から右に並び、最後に4万時間と書かれた図
県庁が踏んだ順番(2023年6月から2026年度)

2023年6月のガイドライン策定とexaBaseの導入

県のデジタル戦略推進本部会議の資料静岡県「令和6年度第2回デジタル戦略推進本部会議 資料」(2024年9月17日)によると、県は令和5年6月にガイドラインを策定して生成AIを利用できる環境を整えました。庁内で使ううちに、行政の専門用語を含む質問に対応できない、県独自の規程や運用を踏まえた回答ができない、という課題が分かり、それを解決する生成AIツール「exaBase」を導入しています。exaBaseの特徴として資料が挙げるのはRAG機能で、県独自の規程類や議会答弁記録を読み込ませて、県の実務に即した回答が得られるようにしました。RAG機能の検証は、電子申請システムの問合せ対応、議会答弁の叩き台作成、データ分析の3つで行われています。

日本経済新聞の報道では、県は本庁の職員約5,700人に生成AIを提供したとされています(日本経済新聞「静岡県、職員5700人に生成AI提供 事例披露し興味引く」(2025年1月))。この人数は県の公式ページで確認できていないため、報道の数字として扱います。

2026年度は全職員がAIユーザー、目標は4万時間

静岡県副知事コラム 第4回「静岡県の目指す『AI活用』とは?」(2026年5月15日)によると、知事がCAIO(Chief AI Officer)に就任し、AI活用戦略会議で「AIにできることはAIに任せ、職員は職員しかできないことに集中する」との方針が示されました。4月中に全職員にAIアカウントを配布し、7月までに全職員をAIユーザーにすることを目標とし、今年度中の削減目標として4万時間を掲げています。今後は補助金交付業務などコア業務への実証導入を進める方針です。静岡新聞の報道では、新設のAI戦略推進室が展開を担い、年2回、部局が活用事例を持ち寄って効率化や住民サービスの向上を競うコンテストを行うとされています(静岡新聞アットエス「『AIにできることはAIに』静岡県庁で全職員が生成AI利用へ」(2026年))。

県庁の3年を並べると、ルールを先に作り、汎用ツールで課題を見つけ、県の資料を読み込めるツールに替え、少人数の検証を経て全員に配る、という順番です。

静岡市|300人のCopilotから全職員のzevoへ

静岡市は、段階の区切りがはっきりしている例です。

左に300人・Microsoft 365 Copilot・年間約3万5千時間、右に全職員・自治体AI zevo・職員向けFAQシステムを並べ、左から右へ矢印を置いた図
静岡市の2段階(2025年11月末と2026年7月1日)

2025年11月末に選抜300人で本導入

静岡市「行政業務への本導入に合わせた職員向け生成AI利活用説明会」(2025年11月26日発表)によると、静岡市は令和7年11月末から行政業務に生成AIを本導入しました。導入したサービスは「Microsoft 365 Copilot」で、庁内で選抜された300人の職員が利用します。文書要約や情報整理に加え、データ分析や計画策定など専門性の高い業務にも使う想定で、12月3日に職員向けの利活用説明会を開きました。参加は市職員70名で、その他の職員はオンライン参加です。

2026年7月1日から全職員に「自治体AI zevo」

静岡市「6月30日『全職員向け生成AIサービス』運用開始に伴う説明会の開催」(2026年6月23日発表)によると、2025年度は職員300人を対象に本導入したCopilotで年間約3万5千時間の業務削減効果を達成し、創出した時間を新たな政策立案や市民サービスの向上に充てました。そのうえで7月1日から、全職員を対象に汎用性の高い生成AIサービス「自治体AI zevo」と、庁内マニュアル等を活用した「職員向けFAQシステム」を展開しています。zevoはシフトプラス株式会社が提供し、LGWAN回線上で使える環境で、公文書や通知文の作成・校正、メール文案の作成、資料の要点整理に使います。FAQシステムはAllganize Japan株式会社のプラットフォームを使い、ノーコード・ローコードで作ったもので、庁内マニュアルや業務資料を基に職員の質問に答え、根拠の該当箇所をあわせて示します。

資料には、他の政令指定都市よりも人口減少が著しい状況にある同市では、限られた財源や人員を最大限活用する必要があり、業務上のムダの削減と職員の処理時間の創出が急務だと書かれています。300人で効果を数字にしてから全職員に広げた、という順番が静岡市の特徴です。

浜松市|DX推進計画で利用職員数を指標にする

浜松市は、人数を計画の指標に置いた例です。

2025年度1,200人から2029年度2,000人まで、毎年200人ずつ上がる5段の図
生成AIの利用職員数の目標値(浜松市DX推進計画)

目標値は毎年200人ずつ

浜松市「AIの利用推進」(浜松市DX推進計画 2026年5月改訂版)によると、計画期間は2025年度から2029年度で、指標は「生成AIの利用職員数」です。目標値は2025年度1,200人、2026年度1,400人、2027年度1,600人、2028年度1,800人、2029年度2,000人と、毎年200人ずつ増やす設計です。あわせて、AI議事録作成、電話相談記録のリアルタイムAIテキスト化、AIシフト作成ツールなど、特定の業務向けのAIツールの試験導入を計画しています。

全員か、人数で区切るか

県庁と静岡市が「全職員」を目標に置いたのに対し、浜松市は年ごとの人数を段階的に積み上げる形です。どちらが正しいということではなく、組織の規模と業務の種類によって広げ方は変わる、という例として読めます。中小企業なら「来年度は営業と総務の10人まで」のように、人数で区切るほうが現実的な会社も多いはずです。

政令市以外の市町はどう動いているか

静岡県には35の市町があります。静岡県オープンデータ「行政界」によると、平成の大合併で74市町村が35市町(23市12町)になりました。このうち政令市は静岡市と浜松市の2つで、残る33市町は総務省調査の「その他の市区町村」に当たります。

掛川市は2024年度にプロポーザルで生成AIを調達

例として、掛川市「令和6年度 生成AIサービス活用に関する業務委託 公募型プロポーザルの実施(審査結果追加)」があります。掛川市は職員が機密情報を守りながら安全かつ効率的に業務を行える生成AIサービスの導入を目的に公募型プロポーザルを行い、提案書の締切が2024年10月9日、最終結果の公表が10月24日、契約期間は契約締結日から2025年3月31日まででした。目的として「業務の効率化、業務負担の軽減、業務コストの削減」が挙げられています。担当はDX推進課デジタル推進係です。

市町ごとの導入状況は公式に一覧化されていない

政令市以外の33市町がそれぞれどのサービスを入れているかを、県内で一覧にした公式資料は2026年9月時点で確認できていません。総務省の調査には団体別の個票がありますが、この記事では市町ごとの状況を断定していません。自社の所在地の市町がどう動いているかは、各市町のDX担当課のページか、総務省の調査結果の団体別データで確認してください。

自治体が始めた手順を中小企業に置き換える

県、静岡市、浜松市、掛川市の動きに共通する順番があります。

ルールを決める、少人数で試す、全員に広げる、時間で測る、の4つが左下から右上へ上がる図
自治体に共通する順番を中小企業に当てはめる

順番は「ルールを決める、少人数で試す、全員に広げる」

県庁は2023年6月にガイドラインを作ってから環境を整え、静岡市は300人で本導入してから全職員に広げました。総務省調査でも導入済みの団体の82.7%がガイドラインを策定済です。中小企業も同じで、最初にA4一枚のルールを作り、部署を絞って使い、効果が見えてから広げる順番が無理がありません。ルールの作り方は静岡の中小企業の生成AI利用ルールで、推進役の最初の仕事はAI推進担当が最初にやることで整理しています。

効果は時間で測る

静岡市は300人で年間約3万5千時間、県庁は全職員で年4万時間という「時間」を指標にしています。金額や売上ではなく時間で測っているのは、生成AIが減らすのが「書く時間」「探す時間」だからです。中小企業でも、議事録、メール、社内文書の作成に週に何時間かかっているかを先に測り、導入後に同じ物差しで測り直すと、効果の有無が誰にでも分かります。議事録の時間の測り方は静岡の中小企業の議事録を生成AIでに手順があります。

入力しない情報の線引きは国のガイドラインに寄せる

自治体が使うサービスは、静岡市のzevoのようにLGWAN回線上で動くものや、県庁のように庁内の規程を読み込ませたものです。共通しているのは、どこに情報を置くかを先に決めていることです。国のルールとしてはデジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(DS-920・2026年6月12日改定)があり、政府機関向けのルールですが「地方公共団体においても、必要に応じ、参考とされることを期待する」と明記されています。AI統括責任者(CAIO)の設置や、高リスクな生成AIの利用の判断、要機密情報の保護のための権限管理とログ取得が柱です。中小企業は、この構造を「使ってよい業務」「入力しない情報」「出力を確認する人」の3点に縮めれば十分です。

自治体向けに提案・納品する県内事業者が押さえる点

県内のIT事業者や研修会社が自治体に生成AIを提案するときは、総務省調査の数字が交渉の前提になります。

契約は約款型が多く、カスタマイズはRAG型

導入している生成AIの契約方法は「約款型外部サービスによる利用」が503団体で最も多く、「個別契約等、約款型外部サービスでない形態による利用」は365団体です。カスタマイズしている団体は235団体で、していない団体925団体より少なく、カスタマイズの方法は「生成AIのモデルはそのままで、外部ソースとして業務知識を参照させている(RAG)」が244件と最も多い形です。カスタマイズの対象は「マニュアル」139件、「議会会議録」132件、「計画」104件、「法令」99件、「FAQ集」89件の順でした。

県内3団体のツールは全国の上位に入る

つまり自治体が求めているのは、モデルの作り込みではなく、庁内のマニュアルや会議録を安全に参照できる形です。静岡市の職員向けFAQシステムが「庁内マニュアルや業務資料を基に、根拠の該当箇所とあわせて示す」形なのは、この全国の傾向と一致します。本運用で導入されているサービスは「LoGoAIアシスタント」233団体が最多で、「自治体AI zevo」139団体、「Copilot」119団体、「exaBase生成AI for 自治体」76団体と続きます。県内の3団体が選んだツールはいずれも全国の上位に入るものです。提案の型は中小企業の生成AI研修の始め方の設計手順を自治体向けに読み替えると組めます。自治体向けの研修設計の相談はお問い合わせから受け付けています。

よくある質問

Q. 静岡県内の市町は全部生成AIを入れていますか

いいえ。総務省の調査(令和6年12月31日現在)では、その他の市区町村で導入済みは29.9%です。県内の政令市2つは指定都市の区分で90.0%の側にいますが、残る33市町の状況は市町ごとに違い、県内の一覧は公式に確認できていません。

Q. 県庁の4万時間は達成されたのですか

副知事コラム(2026年5月15日)に書かれているのは今年度中の目標値です。2026年9月時点で、達成状況を示す県の公式発表は確認できていません。

Q. 静岡市の3万5千時間はどう計算したのですか

市の報道資料(2026年6月23日)には「職員300人を対象に本導入した生成AIにより、年間約3万5千時間の業務削減効果を達成」とあるだけで、計算方法は書かれていません。1人当たりに直すと年約117時間ですが、この割り算は記事側の計算で、市の資料にはありません。

Q. 自治体と同じツールを中小企業が使えますか

「自治体AI zevo」や「exaBase生成AI for 自治体」は自治体向けのサービスで、LGWAN回線など自治体の環境を前提にしています。中小企業は一般向けの法人プランで同じ考え方を実現できます。大事なのはツール名ではなく、ルール、少人数の試行、時間での測定という順番です。

Q. 自治体向けに研修を提案するとき、何から話せばよいですか

総務省調査の課題1位が「取り組むための人材がいない又は不足している」549件である点から入ると、話が早く進みます。ツールの導入率ではなく、職員が使い続けるための研修と、庁内資料を参照できる仕組みの2点を提案の軸にしてください。

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参考・出典