この記事の要点
- 名古屋税関が公表した令和7年(2025年)分の速報では、静岡県(清水税関支署管内)の輸出額は2兆6,156億円、輸入額は1兆4,606億円で、差引1兆1,550億円の輸出超過です。全国の輸出額に占める割合は2.4%です。
- 県内の貿易は清水港に集中しています。清水港の輸出額は2兆1,656億円で県全体の8割強、御前崎港が4,400億円、田子の浦港が100億円です。静岡空港は輸出の実績がありません。
- 清水港の輸出は二輪自動車類(2,181億円)、原動機(2,648億円)、自動車の部分品(1,830億円)が柱で、輸入はまぐろ(1,562億円)が最大の品目です。御前崎港は完成車(1,973億円)が輸出の44.9%を占めます。
- 貿易統計の「清水港」には浜松・沼津・焼津・興津の各出張所の分が含まれます。港の場所と数字の範囲がずれるので、社内資料に引用する時は「清水税関支署管内の清水港」と注記します。
- 生成AIは、統計の数字を「どれを使うか」判断する作業には向きません。人が数字を確定した後に、表の整形・説明文の下書き・前年比の言い換えを任せる分担が安全です。
静岡県の輸出入額の早見表(令和7年分)
まず県全体と港別の数字を押さえます。以下は名古屋税関清水税関支署が令和8年1月23日に発表した令和7年分(2025年1〜12月)の速報値です(名古屋税関「清水税関支署管内 貿易概況(速報)」(2026年1月23日発表・令和7年分))。

県全体の数字と全国に占める割合
| 区分 | 令和7年 | 前年比 | 全国に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 輸出額 | 2兆6,156億円 | ▲0.1% | 2.4% |
| 輸入額 | 1兆4,606億円 | +3.0% | 1.3% |
| 輸出入額 | 4兆762億円 | +1.0% | 1.8% |
| 差引額(輸出超過) | 1兆1,550億円 | ▲3.7% | - |
「静岡県」と書いていますが、統計上の名前は「清水税関支署管内」です。清水税関支署が管轄する清水港・田子の浦港・御前崎港・静岡空港の合計を指します。全国では令和7年の輸入額(113兆987億円)が輸出額(110兆4,480億円)を上回る輸入超過でしたが、静岡県は1兆円を超える輸出超過です。県の製造業が輸出向けに動いていることが、この一つの表で読み取れます。
港別の内訳
| 港 | 輸出額 | 前年比 | 輸入額 | 前年比 | 差引額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 清水港 | 2兆1,656億円 | +0.4% | 1兆3,726億円 | +1.1% | 7,930億円 |
| 御前崎港 | 4,400億円 | ▲2.0% | 594億円 | 2.4倍 | 3,805億円 |
| 田子の浦港 | 100億円 | ▲13.9% | 285億円 | ▲17.2% | ▲185億円(輸入超過) |
| 静岡空港 | 実績なし | - | 7,850万円 | - | - |
清水港だけで県の輸出額の8割強、輸入額の9割強を占めます。御前崎港は輸出額に対して輸入額が小さく、差引額が大きい「輸出型の港」です。田子の浦港は唯一の輸入超過で、製紙原料のパルプが輸入の1割強を占めます。
推移|令和3年から令和7年まで
| 年 | 県の輸出額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 令和3年 | 2兆4,069億円 | +21.7% |
| 令和4年 | 2兆5,874億円 | +7.5% |
| 令和5年 | 2兆6,537億円 | +2.6% |
| 令和6年 | 2兆6,172億円 | ▲1.4% |
| 令和7年 | 2兆6,156億円 | ▲0.1% |
令和5年をピークに、2年連続でわずかに減っています。ただし減り幅は1%台以下で、「静岡の輸出が落ちている」と書くには弱い数字です。令和3年と令和4年の大きな伸びは新型コロナからの回復と円安が重なった時期なので、その2年を起点に伸び率を出すと実態より良く見えます。
清水港の主要品目|二輪・自動車部品・まぐろ
清水港は静岡県の貿易の中心です。ここでは令和7年分の概況品別表から、金額の大きい品目を拾います(名古屋税関「清水税関支署管内 貿易概況(速報)」概況(XLSX形式)令和7年分)。

輸出の上位品目
| 品目 | 金額 | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 原動機 | 2,648億円 | 12.2% | ▲1.5% |
| 二輪自動車類 | 2,181億円 | 10.1% | +3.5% |
| 自動車の部分品 | 1,830億円 | 8.4% | ▲1.8% |
| 科学光学機器 | 1,230億円 | 5.7% | ▲23.0% |
| 電気回路等の機器 | 893億円 | 4.1% | +6.7% |
| 加熱用・冷却用機器 | 600億円 | 2.8% | +15.9% |
| 写真用・映画用材料 | 488億円 | 2.3% | ▲16.0% |
| 楽器 | 102億円 | 0.5% | ▲16.3% |
| 茶 | 88億円 | 0.4% | +38.8% |
大分類の「機械類及び輸送用機器」が1兆3,642億円で輸出の63.0%を占めます。二輪自動車類と自動車の部分品を足すと4,011億円で、輸出の2割弱が輸送用機器の関連品です。浜松を中心とする二輪・自動車部品産業の輸出が、清水港の数字に乗っている形です。楽器は102億円で構成比0.5%にとどまりますが、これは清水港分だけの数字で、後述の御前崎港に309億円の楽器輸出があります。港をまたいで足さないと産業の実態を小さく見せてしまいます。
茶は88億円で構成比は小さいものの、前年比+38.8%と伸び率では上位品目の中で最も高く、数量も2,571トンで+13.5%です。県の茶業を扱う記事では、生産量だけでなく清水港からの輸出額も添えると数字に立体感が出ます(静岡県の茶の生産量の早見表)。
輸入の上位品目
| 品目 | 金額 | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 魚介類及び同調製品 | 2,046億円 | 14.9% | +10.1% |
| うち まぐろ | 1,562億円 | 11.4% | +16.1% |
| 液化天然ガス | 1,069億円 | 7.8% | ▲7.5% |
| パルプ | 492億円 | 3.6% | ▲6.5% |
| プラスチック | 420億円 | 3.1% | +1.7% |
| 重電機器 | 413億円 | 3.0% | +66.4% |
| 金属鉱及びくず | 234億円 | 1.7% | 2.3倍 |
| お茶 | 75億円 | 0.5% | +16.3% |
清水港の輸入で最大の品目はまぐろで、単独で1,562億円です。魚介類全体では2,046億円で輸入の14.9%を占め、焼津・清水の水産加工業の原料が海外から入っている構造が見えます。水産加工の現場では「原料は輸入まぐろ」という前提が当たり前でも、社外向けの資料では税関の数字で裏付けると説得力が変わります(焼津・沼津の水産加工×生成AI)。
お茶の輸入が75億円ある点も見落としやすい数字です。輸出88億円と輸入75億円が並ぶので、「静岡は茶を輸出する県」と一言で書くと片面だけになります。
地域別の読み方
清水港の輸出先はアジアが8,387億円(38.7%)、北米が6,305億円(29.1%)です。令和7年はアジア向けが▲6.3%、北米向けが+4.1%で、方向が逆でした。輸入はアジアからが9,569億円で69.7%を占め、北米からは619億円(4.5%)にとどまります。輸出先と輸入元で地域の顔ぶれが違うので、「主要相手国」を一つの表にまとめる時は輸出と輸入で列を分けます。
御前崎港と田子の浦港の読み方|完成車と製紙
清水港以外の2港は、扱う品目がはっきり分かれています。静岡市の清水港と、県中西部の御前崎港、富士市の田子の浦港で役割が違う点は、県内の産業立地そのものです(静岡県「港湾紹介」(2023年1月13日更新))。

御前崎港|完成車が輸出の44.9%
| 輸出品目 | 金額 | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 1,973億円 | 44.9% | ▲24.3% |
| 自動車の部分品 | 913億円 | 20.8% | +36.5% |
| 楽器 | 309億円 | 7.0% | ▲13.7% |
| 二輪自動車類 | 161億円 | 3.7% | +12.6% |
御前崎港は完成車の積み出し港です。令和7年は自動車が▲24.3%と大きく減った一方、自動車の部分品が+36.5%と伸び、輸出額全体では▲2.0%にとどまりました。完成車と部品で動きが逆なので、「御前崎港の輸出が減った」とだけ書くと部品の伸びが消えます。輸入は594億円で前年の2.4倍ですが、内訳では自動車が230億円と前年の555倍になっており、単年の特殊要因です。伸び率だけを見て「輸入が急増」と書くと誤解を生みます。
楽器の輸出は御前崎港の309億円と清水港の102億円を合わせて411億円です。浜松の楽器産業の輸出額を引用する時は、この2港の合計を使います(取扱説明書と修理案内を生成AIで|浜松の楽器産業)。
田子の浦港|製紙原料の輸入港
田子の浦港は輸出100億円に対して輸入285億円で、県内で唯一の輸入超過の港です。輸入の1割強(31億円・前年比+85.7%)がパルプで、富士市の製紙業に向けた原料が入っています。金額の規模は清水港の100分の1以下ですが、県の製紙業を語る時にはこの港の数字が根拠になります。
静岡空港|貿易統計では実績がほぼない
静岡空港は令和7年の輸出が実績なし、輸入が7,850万円です。旅客の便数とは別の話なので、「静岡空港の貨物」を語る時は貿易統計に数字がほぼ無いことを前提にします。
貿易統計を読むときの4つの注意点
名古屋税関の資料は数字が細かく、そのまま引用すると読み違えが起きやすい点があります。資料の注記に沿って4点に絞ります。

速報値と確定値
令和7年分は「速報」です。資料の注記には「令和6年以前は確定値、令和7年は速報値」と明記されています。速報値は後日、輸入の一部などが修正されるので、引用する時は「速報値」と書き添え、翌年に確定値が出たら差し替えます。
「清水港」の範囲
資料の注記では、清水港とは「清水税関支署、焼津、沼津、浜松、興津の各出張所」の管轄分を指すとされています。つまり浜松の工場から出た二輪車が浜松出張所で通関すれば、貿易統計上は「清水港」の輸出です。港湾管理の「清水港」(静岡市清水区の港)とは範囲が違うので、県の港湾統計(取扱貨物量)と税関の貿易統計(金額)を並べる時は出典を分けて書きます。
輸出はFOB、輸入はCIF
輸出額は本船渡し(FOB)価格、輸入額は運賃・保険料込み(CIF)価格で計上されています。輸入額には運賃と保険料が含まれるので、同じ品物でも輸出側の数字より大きく出ます。差引額を「利益」のように読むのは誤りです。
前年比と構成比
資料の「伸率」は前年同期比です。金額が小さい品目は伸び率が極端になります(御前崎港の輸入自動車が555倍、清水港の金属鉱及びくずが2.3倍など)。社内資料では、伸び率と金額を必ずセットで書き、構成比が1%未満の品目の伸び率だけを見出しにしないようにします。
2026年(令和8年)の直近の動き|上半期と8月分
年次の数字に加えて、名古屋税関は毎月の速報も出しています。令和8年8月分は9月17日に発表されました(名古屋税関「清水税関支署管内 貿易概況(速報)」令和8年8月分(2026年9月17日発表))。

上半期と8月分の数字
| 期間 | 清水港 輸出額 | 前年同期比 | 清水港 輸入額 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年上半期 | 1兆1,180億円 | +8.5% | 7,528億円 | +9.0% |
| 令和8年8月 | 1,665億円 | +1.1% | 1,347億円 | +33.1% |
清水港の輸出は8月まで11か月連続で前年同月を上回っています。上半期は輸出・輸入とも2期連続の増加でした。
ドルレートと単月の読み方
8月分の資料では、月間のドルレートが160.64円(前年同月比8.7%の円安)と記載されています。円安の局面では円建ての輸出額が膨らむので、数量の増減と分けて読む必要があります。令和7年分の年間ドルレートは149.69円でした。
月次の数字は変動が大きく、単月で傾向を語るのは危険です。社内の景況メモに使うなら、四半期または上半期の累計で見ます。
静岡の中小企業が貿易統計を社内資料に使う場面
貿易統計を自社の数字と並べる場面は限られますが、使いどころははっきりしています。

使う場面
- 輸送機器サプライヤーが、取引先の完成車・二輪の輸出動向を説明する資料の背景データにする。
- 水産加工業者が、原料の輸入まぐろの動きを金融機関向けの事業計画に載せる。
- 製紙・紙加工業者が、パルプ輸入の増減を仕入れ価格の説明に添える。
- 茶業者が、茶の輸出額の伸びを海外向け提案の根拠にする。
- 経営革新計画や補助金の申請書で、県の産業環境を数字で示す。
県内の産業構造は製造品出荷額の統計とも組み合わせると立体的になります(静岡県の製造品出荷額の早見表)。
生成AIに任せる作業と任せない作業
| 任せない作業 | 任せる作業 |
|---|---|
| どの年・どの港・どの品目の数字を使うか決める | 確定した数字を表に整形する |
| 速報値か確定値かを確かめる | 前年比を「増えた・減った」の文章に言い換える |
| 港の範囲(清水港に浜松が含まれる等)を判断する | 表の下に注記文を下書きする |
| 自社の売上と統計の関係を解釈する | 社内向けの要約を200字にまとめる |
生成AIに「静岡県の輸出額を調べて」と頼むと、古い年の数字や港湾統計の取扱貨物量を混ぜて返すことがあります。数字は人が名古屋税関の資料から取り、生成AIには整形と文章化だけを渡します。
プロンプト例
数字を確定した後、社内資料の説明文を下書きさせる例です。
以下の数字は名古屋税関「清水税関支署管内 貿易概況(速報)」令和7年分から取った確定済みの値です。数字を変えずに、社内会議用の説明文を300字で書いてください。伸び率の解釈は加えず、事実だけを書いてください。
- 静岡県の輸出額 2兆6,156億円(前年比▲0.1%)
- 清水港の輸出額 2兆1,656億円(+0.4%)
- 御前崎港の輸出額 4,400億円(▲2.0%)
- 清水港の輸入のうち まぐろ 1,562億円(+16.1%)
出力を受け取ったら、数字が一つも変わっていないことを人が照合します。生成AIは「約2.6兆円」のように丸めることがあるので、丸めを禁止する一文を入れておくと修正が減ります。
あわせて読みたい
よくある質問
Q. 静岡県の輸出額はいくらですか。
名古屋税関の速報で、令和7年(2025年)の清水税関支署管内(静岡県)の輸出額は2兆6,156億円、輸入額は1兆4,606億円です。速報値なので、確定値が出たら差し替えてください。
Q. 清水港の数字に浜松の工場の輸出は入っていますか。
入っています。貿易統計の「清水港」は清水税関支署と焼津・沼津・浜松・興津の各出張所の管轄分の合計です。港湾としての清水港の取扱貨物量とは範囲が違います。
Q. 御前崎港の輸出が減ったのはなぜですか。
令和7年は完成車の輸出が1,973億円で▲24.3%でした。一方で自動車の部分品は913億円で+36.5%と伸びており、港全体では▲2.0%です。減った理由は税関の資料には書かれていないので、要因の説明は別の一次情報が必要です。
Q. 月次の速報はいつ出ますか。
名古屋税関の清水税関支署管内の月分速報は、翌月の20日前後に発表されています。令和8年8月分は9月17日に出ました。年分の速報は翌年1月下旬です。
Q. 生成AIに貿易統計を調べさせても大丈夫ですか。
数字の取得は人が一次資料から行い、生成AIには整形と文章化だけを任せてください。生成AIは古い年の数字や別の統計(港湾の取扱貨物量など)を混ぜることがあります。
運営元 Uravation より自社に近い業務から着手先を選ぶ材料として、業務別の生成AI活用事例50例を無料で公開しています。 生成AI活用事例 業務別50選を受け取る(無料)