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介護記録と書類を生成AIで軽くする手順|静岡の介護事業所

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介護記録と書類を生成AIで軽くする手順|静岡の介護事業所

先に結論を書きます。介護記録そのものを外部の生成AIに貼り付けるのは、いちばん割に合わない使い方です。記録には要配慮個人情報が入るからです。実際に軽くなるのは、利用者が出てこない書類のほうです。手順書、職員研修の資料、委員会の議題と議事録、求人票、家族向けのお知らせの文案。ここから手をつけると、制度上のリスクを増やさずに時間が戻ってきます。

静岡の介護現場で、人手はどれだけ足りないのか

厚生労働省が2024年7月12日に公表した第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、都道府県の推計を集計した介護職員の必要数は2026年度に約240万人(2022年度比で約25万人増)、2040年度に約272万人(同じく約57万人増)です。

静岡県の現場で起きていることを、別の角度から見た数字もあります。静岡労働局が2026年1月30日に公表した静岡県の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)では、外国人労働者数の対前年増加率が最も高い産業が「医療、福祉」の29.4%増でした。次いで「宿泊業、飲食サービス業」の18.8%増です。県内で最も速く人の構成が変わっている現場のひとつが、介護・福祉だということになります。

人件費の前提も動きます。静岡県最低賃金は2026年10月15日に1,154円へ改定される予定です(詳細は静岡県最低賃金2026は1,154円へにまとめています)。

つまり、人は増やしにくく、1時間あたりの単価は上がる。この条件で最初に見直すべきは、直接介護ではなく間接業務のほうです。

介護記録を生成AIに貼らないほうがよい理由

生成AIに入れない情報と任せてよい下書き
生成AIに入れない情報と任せてよい下書き

「記録の下書きをAIに書かせたい」という相談はよく受けます。気持ちはわかりますが、そこは最初に手をつける場所ではありません。

医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年4月14日/令和8年4月一部改正、個人情報保護委員会・厚生労働省)は、要配慮個人情報について次のように書いています。

医療機関等及び介護関係事業者において想定される要配慮個人情報に該当する情報とは、診療録等の診療記録や介護関係記録に記載された病歴、診療や調剤の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た診療情報や調剤情報、健康診断の結果及び保健指導の内容、障害(身体障害、知的障害、精神障害等)の事実、犯罪により害を被った事実等が挙げられる。

同ガイダンスは続けて、「要配慮個人情報の取得や個人データの第三者提供には、原則として本人同意が必要である」こと、「要配慮個人情報である個人データについては、法第27条第2項の規定による第三者提供(オプトアウトによる第三者提供)は認められていない」ことを明記しています。

さらに、個人情報保護法第23条から第25条にあたる安全管理措置・従業者の監督・委託先の監督の解説も置かれています。外部のクラウドサービスに個人データの取扱いを任せる場合、その監督責任は事業所側に残ります。

そしてこれは、加算の世界でも前提になっています。厚生労働省の令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算についての解説資料では、委員会の議論の進め方の注記として「『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』等を遵守すること」と書かれています。生産性向上の取り組みと個人情報の適切な取扱いは、制度上セットで扱われています。

したがって、事業所として最初に決めるべきは「どのAIを使うか」ではなく、どの情報を外に出さないかです。

先に軽くなるのは「利用者が出てこない書類」

線引きを決めたうえで、効果が出やすい順に並べると次のようになります。

  1. 手順書(業務手順、機器の使い方、新人向けの動き方)
  2. 職員研修の資料(説明用スライドの構成案、理解度確認の設問)
  3. 委員会の議題案と議事録の整形(発言者名・利用者名を除いた素材から)
  4. 求人票・募集要項の文面(訴求点の書き分け、条件の整理)
  5. 家族向けのお知らせ・掲示物の文案(個人名を入れない汎用文)
  6. ヒヤリ・ハットの再発防止策のたたき台(事例を匿名化・抽象化した形で)
  7. 各種届出や実績報告の様式の読み解き(公開されている手引きを要約させる)

このうち1と2が、投入時間に対する戻りがいちばん大きい領域です。求人票については採用業務の生成AI活用6選、事務全般の考え方は経理・総務・人事の生成AI活用8業務|静岡の中小企業が近い内容を扱っています。

厚生労働省の7つの取組に当てはめる

生産性向上の7つの取組
生産性向上の7つの取組

思いつきで手をつけると続きません。厚生労働省は介護分野における生産性向上の取組の進め方として、次の7つの改善活動を示しています。

  1. 職場環境の整備
  2. 業務の明確化と役割分担
  3. 手順書の作成
  4. 記録・報告様式の工夫
  5. 情報共有の工夫
  6. OJTの仕組みづくり
  7. 理念・行動指針の徹底

生成AIが素直に効くのは、3(手順書の作成)・4(記録・報告様式の工夫)・5(情報共有の工夫)・6(OJTの仕組みづくり)です。いずれも「文章を書く仕事」だからです。1と7は組織の話なので、道具では解決しません。2は業務の棚卸しが先です。

逆に言えば、AI導入の話をするときに、この7項目のどこに乗せるのかを説明できないと、現場は動きません。厚生労働省の介護分野における生産性向上ポータルサイトには、事例や研修の資料もまとまっています。

手順書づくりが一番の当たり所

手順書は、たいていの事業所で「ベテランの頭の中にある」状態です。書き起こす時間がないから、いつまでも属人化します。生成AIが効くのはまさにここです。

段取りはこうです。

第1段階|ベテラン職員に、その業務を口頭で説明してもらいながら録音します。5分から10分で十分です。

第2段階|文字起こしをします。この時点で、利用者の氏名や個別の状態が混ざっていないか必ず確認してください。会話には固有名詞が入ります。伏せてから次に進みます。

第3段階|伏せた文字起こしを生成AIに渡し、手順書の形に整えさせます。指示の例です。

次の説明の文字起こしを、新人が1人で読んで動ける手順書にしてください。条件は、番号付きの手順にする/各手順に「なぜそうするのか」を1行添える/説明の中で曖昧だった箇所は勝手に補わず「要確認」と印を付ける、です。人物の固有名詞は出さないでください。

第4段階|現場で1回やってみます。詰まった箇所が、書き足りない箇所です。

第5段階|直して確定させます。承認するのは管理者です。

この流れで作った手順書は、そのまま職員研修の教材になります。外国人スタッフを受け入れている事業所であれば、やさしい日本語版を併せて作っておくと定着が早くなります。書き換えの手順は外国人スタッフへの説明文書を生成AIでやさしい日本語に|静岡にまとめています。

生産性向上推進体制加算との関係

加算Ⅰと加算Ⅱの要件の違い
加算Ⅰと加算Ⅱの要件の違い

制度の話をします。令和6年度介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算は、テクノロジー導入後の継続的な活用を評価する加算です。前掲の厚生労働省の解説資料によると、単位数と要件は次のとおりです。

  • 生産性向上推進体制加算(Ⅰ): 100単位/月
  • 生産性向上推進体制加算(Ⅱ): 10単位/月

共通する要件は、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を3月に1回以上開催すること、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うこと、1年に一度、業務改善の取組の実績を示すデータの提供を行うことです。

導入が必要なテクノロジーは3種類に整理されています。

  1. 見守り機器(利用者がベッドから離れようとしている状態または離れたことを感知でき、外部通信機能により職員に通報できるセンサー)
  2. インカム等
  3. 介護記録作成の効率化に資するICT機器(介護記録ソフトウェア等)

加算(Ⅰ)は1から3の全ての導入が必要で、加算(Ⅱ)は1から3のうち1つ以上です。加算(Ⅰ)はこれに加えて、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組と、業務改善の取組による成果の確認が求められます。

ここが実務上の要点です。汎用の生成AIサービスを契約しただけでは、この3種類のどれに当たるかは資料に書かれていません。加算の可否は保険者の判断になるため、算定を前提に導入を進める場合は必ず事前に確認してください。生成AIは、手順書づくりや委員会の運営を軽くする道具として位置づけるのが素直です。

なお委員会は、加算を取得する場合、基準省令の経過措置期間中であっても設置が必要とされています。委員会で検討すべき事項として、資料は次の4つを挙げています。

  1. 利用者の安全及びケアの質の確保
  2. 従業者の負担の軽減及び勤務状況への配慮
  3. 介護機器の定期的な点検
  4. 職員に対する研修

このうち4の研修資料づくりは、生成AIで軽くできる部分です。

静岡県の補助金|令和8年度分の受付は8月末で終了している

静岡県は令和8年度「介護テクノロジー定着支援事業費補助金」を実施しました(ページ更新日は令和8年8月19日)。ただし申請受付期間は令和8年8月3日から8月31日までで、この記事の公開時点ではすでに終了しています。

制度の枠組みは押さえておく価値があります。県のページによると、対象は介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所(訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を含む)および老人福祉法に基づく養護老人ホーム・軽費老人ホームです。補助対象は、福祉用具情報システム(TAIS)で「介護テクノロジー」として選定された機器に加え、インカムおよびバックオフィスソフトとされています。実績報告は事業完了後30日以内、または令和9年4月10日のいずれか早い日です。

生成AIのサブスクリプション契約がこの補助対象に含まれるかどうかは、県のページからは確認できませんでした。「バックオフィスソフト」の定義は要綱で決まるため、次年度に申請を考えるなら、募集開始前に県の介護保険課へ対象範囲を確認してください。補助金は要件審査があり、対象となる場合があります。

制度全体の見取り図は静岡のAI導入補助金5選、相談先の選び方は静岡県のDX・AI支援窓口にまとめています。

導入前に決めておく5つのルール

事業所として、次の5点を1枚の紙に書いてから始めてください。

  1. 入力してよい情報の線引き。利用者の氏名・生年月日・病歴・介護関係記録は入れない、と明記します
  2. 使うサービスを絞る。誰でも好きなツールを使う状態にしない。入力内容の取扱いを契約や設定で確認できるサービスに限定します
  3. 出力は必ず人が確認する。手順書も研修資料も、承認するのは管理者です
  4. 記録システムへの転記ルール。AIが作った文章を記録に流し込む運用は、最初は作らないほうが安全です
  5. 委員会の議題に載せる。生産性向上推進体制加算を算定するなら、そもそも委員会での検討が要件です。別立ての取り組みにせず、既にある会議体に載せます

誰がこのルールを持つのかを決めないと形になりません。担当の置き方はAI推進担当が最初の90日でやること|静岡の中小企業を参照してください。

まとめ

介護分野の生成AIは、「記録を書かせる」から入ると個人情報の壁で止まります。利用者が出てこない書類から入るのが、結果として早い。手順書、研修資料、委員会の議題と議事録、求人票、掲示物の文案です。

制度面では、厚生労働省の7つの取組のどこに乗せるのかを先に決め、生産性向上推進体制加算を狙うなら委員会とテクノロジー3種類の要件を確認してください。汎用の生成AIサービスが加算のテクノロジー要件に当たるかは資料に書かれていないため、保険者への確認が必要です。静岡県の補助金は令和8年度分の受付が8月末で終わっているので、次年度に向けて対象範囲を県に確認しておくのが現実的な動き方です。

自事業所でどこから始めるか整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。このメディアの方針はこのサイトについてに書いています。

出典・参考

  1. 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日/令和8年4月一部改正・PDF)
  2. 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」案内ページ(2026年9月6日閲覧)
  3. 厚生労働省 老健局高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室「令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について」(PDF)
  4. 厚生労働省「介護分野における生産性向上の取組の進め方」(2026年9月6日閲覧)
  5. 厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」(2026年9月6日閲覧)
  6. 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(令和6年7月12日公表)
  7. 静岡県「令和8年度『介護テクノロジー定着支援事業費補助金』」(令和8年8月19日更新)
  8. 静岡労働局「静岡県の『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)」(令和8年1月30日発表・PDF)

この記事で確認できていないこと(2026年9月6日時点)

  • 静岡県内の介護職員の需給ギャップの推計値。厚生労働省の都道府県別資料は画像形式で、静岡県の数値を機械的に読み取れませんでした。全国値のみを本文で使っています。
  • 生成AIのサブスクリプション契約が、静岡県の介護テクノロジー定着支援事業費補助金の「バックオフィスソフト」に含まれるかどうか。県のページに記載がありません。
  • 汎用の生成AIサービスが、生産性向上推進体制加算のテクノロジー3種類のいずれかに該当するか。厚生労働省の解説資料に記載がありません。
  • 令和9年度の介護テクノロジー定着支援事業費補助金の実施有無と受付時期。2026年9月6日時点で県から告知を確認できていません。

よくある質問

Q. 介護記録の下書きを生成AIに作らせてもよいですか。

A. 記録には要配慮個人情報が含まれます。個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスは、要配慮個人情報の取得や個人データの第三者提供には原則として本人同意が必要であり、オプトアウトによる第三者提供は認められていないとしています。外部サービスへ個人データの取扱いを委託する場合も、事業所側に委託先の監督責任が残ります。まず手順書や研修資料から始めることをおすすめします。

Q. 生成AIを導入すれば生産性向上推進体制加算を算定できますか。

A. 加算で求められるテクノロジーは、見守り機器・インカム等・介護記録作成の効率化に資するICT機器の3種類です。汎用の生成AIサービスがこのいずれかに当たるとは厚生労働省の資料に書かれていません。算定を前提に進める場合は、保険者に事前確認してください。

Q. 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)はどちらから取るべきですか。

A. 単位数は(Ⅰ)が100単位/月、(Ⅱ)が10単位/月です。(Ⅰ)はテクノロジー3種類すべての導入と職員間の適切な役割分担、成果の確認が必要です。厚生労働省の資料には、加算(Ⅱ)を取得せず最初から加算(Ⅰ)を取得することも可能と書かれています。

Q. 静岡県の介護テクノロジー定着支援事業費補助金は今から申請できますか。

A. 令和8年度分の申請受付は令和8年8月3日から8月31日までで、すでに終了しています。次年度の実施有無と受付時期は2026年9月6日時点で確認できていないため、県の介護保険課のページを定期的に確認してください。

Q. 委員会の議事録を生成AIに整形させてよいですか。

A. 利用者の氏名や個別の状態が入っていない形にしてからであれば、整形の下書きに使えます。ただし確定させるのは委員会と管理者です。生産性向上推進体制加算の解説資料でも、委員会の議論は個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス等を遵守して進めることとされています。

Q. 外国人職員が増えていますが、手順書はどう用意すればよいですか。

A. 静岡県では「医療、福祉」の外国人労働者が前年比29.4%増と県内で最も伸びています。手順書を日本語で確定させたうえで、やさしい日本語版を作るのが現実的です。国の指針は安全衛生教育を母国語等や視聴覚教材で理解できる方法により行うことを求めています。具体的な書き換えの手順は外国人スタッフへの説明文書を生成AIでやさしい日本語に|静岡にまとめています。