この記事の要点
- 学校基本調査は毎年5月1日現在の学校を数える基幹統計で、昭和23年度から続いています。
- 8月に出る速報は「学校数・学級数・在学者数・教職員数」まで。卒業者の進路状況は12月の確定値を待つ必要があります。
- 静岡県の数字は、県の統計センターの長期時系列とe-Statの都道府県別表を使い分けると早く揃います。
- 静岡市と浜松市という二つの政令市があるため、県計だけを見て採用母集団を語ると現場の実感とずれます。
- 生成AIは「表の整形」「社内向けの説明文の下書き」には使えますが、数字そのものを言わせてはいけません。
学校基本調査は毎年5月1日時点の学校を数える調査
学校基本調査は、文部科学省が昭和23年度から毎年実施している基幹統計調査です。静岡県統計センターの学校基本調査のページによると、県内のすべての幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学(短期大学を含む)、高等専門学校、専修学校、各種学校が対象です。

調査期日は毎年5月1日で固定されている
調査の時期は毎年5月1日現在です。ここが実務で効きます。「今年の4月に何人入ってきたか」は5月1日時点の在学者数に反映されますが、その年度の途中に増えた分や、年度末に卒業した分はこの数字には入りません。採用の母集団を見積もるときは、必ず「いつ時点の数字か」を資料に書いておきます。
調べる中身は学校数・在学者数・教職員数・進路状況
主要調査事項は、学校数、学級数、児童・生徒数、教職員数、卒業者の進路状況などです。企業側が使うのはほとんどが「在学者数」と「卒業者の進路状況」の二つになります。在学者数は数年先の母集団の大きさ、進路状況は「そのうち何人が就職に回るか」を示します。
調査の流れは、文部科学省から県、県から市町、市町から学校という経路です。大学と高等専門学校については文部科学省が学校に直接照会します。県が集計に入るため、県の統計担当課(企画部統計活用課人口就業班)が県内の市町別データを持っています。
8月の速報と12月の確定値で入る数字が違う
ここが一番つまずきやすいところです。学校基本調査は年に二回、性格の違う数字が出ます。

速報に入る項目と確定値を待つ項目
文部科学省が2026年8月26日に公表した令和8年度学校基本調査の速報では、公表項目は「学校数、学級数、学校種ごとの在学者数・教職員数」と明記されています。そして「全ての項目の集計結果については、本年12月に確定値として公表する予定」とされています。静岡県側の公表予定も「8月速報、12月報告書」で同じ並びです。
| 見たい数字 | 8月の速報に入るか | いつ確定するか |
|---|---|---|
| 学校数・学級数 | 入る | 12月の確定値で精査される |
| 学校種ごとの在学者数 | 入る | 12月の確定値で精査される |
| 教職員数 | 入る | 12月の確定値で精査される |
| 卒業者の進路状況 | 入らない | 12月の確定値 |
| 市町別の内訳 | 県の報告書側で確認 | 12月の報告書 |
秋に資料をつくるときの書き方
秋に採用計画の資料をつくると、8月の速報だけを見て「進学率が」「就職率が」と書きたくなります。しかしその年度の進路状況はまだ出ていません。9月から11月に資料をつくる場合、進路の数字は前年度以前の確定値を使い、「令和◯年度確定値」と年度を添えるのが正しい書き方です。
令和8年度速報の全国値から見える採用母集団の動き
県別の数字を見る前に、全国の方向を押さえておくと、静岡の数字が「全国並み」なのか「県特有」なのかを判断できます。
学校種ごとの在学者数(令和8年度速報値)
以下はすべて令和8年度学校基本調査の結果の概要(速報値)からの引用です。
| 学校種 | 令和8年度の在学者数 | 前年度からの動き |
|---|---|---|
| 高等学校(全日制・定時制) | 284万5千人 | 2万9千人の減少 |
| 高等学校(通信制) | 31万2千人 | 7千人の増加(過去最多) |
| 中学校 | 306万人 | 4万5千人の減少(過去最少) |
| 小学校 | 565万4千人 | 15万8千人の減少(過去最少) |
| 大学 | 300万1千人 | 2万8千人の増加(過去最多) |
| 短期大学 | 6万6千人 | 5千5百人の減少 |
| 高等専門学校 | 5万6千人 | 前年度とほぼ横ばい |
| 専門学校 | 58万人 | 1万1千人の増加 |
| 各種学校 | 11万3千人 | 9百人の増加 |
全国値から読み取れる三つの筋
読み方の筋は三つあります。第一に、高等学校の全日制・定時制が減る一方で通信制が過去最多になっています。高卒採用の窓口を全日制の進路指導室だけに置いていると、通信制に移った層に届きません。第二に、短期大学が5千5百人の減少である一方で専門学校が1万1千人の増加です。技能職の母集団を短大に置いていた企業は、専門学校側の比重を上げる必要があります。第三に、小学校と中学校がともに過去最少です。これは数年から十数年後の高卒・大卒の母集団がさらに細ることを意味します。
これらは全国値です。静岡県の実数が同じ向きかどうかは、次の手順で県の数字を取って確かめます。
静岡県の数字をどこから取るかの早見表
県の数字を探すときに毎回迷うので、取得先を用途別に整理します。
| 欲しいもの | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 県全体の長期の推移 | 静岡県統計センターの長期時系列 | 2026年3月23日公表。調査日は1948年5月1日から2025年5月1日まで |
| 小学校・中学校・高等学校の推移 | 同・長期時系列(項目別) | 学校種を絞った表が別ファイル |
| 都道府県別・市町別の最新値 | e-Statの学校基本調査 | 速報値も確定値もここに載る |
| 卒業者の進路状況 | e-Statおよび県の12月報告書 | 速報には入らない |

県の長期時系列(小学校、中学校、高等学校)はExcelで配布されています。時系列をそのまま使えるので、「10年前と比べてどうか」を出すときはこちらが早いです。
長期時系列は「傾向」を出すときに使う
長期時系列のファイルは昭和23年からの連続データです。経営会議で「母集団が細っている」と説明するとき、直近3年の比較よりも20年の折れ線のほうが伝わります。ただし公表が2026年3月23日で、収録が2025年5月1日時点までなので、最新年度は含まれていません。最新年度が要るときはe-Statを併用します。
市町別が要るときはe-Statに行く
e-Statの学校基本調査には都道府県別の表が揃っています。県の報告書には市町別学校数、児童生徒数、教職員数、卒業者の進路状況などが載るので、浜松市と静岡市を分けて見たい場合は県の12月の報告書とe-Statの両方を当たります。
静岡市と浜松市で母集団の形が違う前提で読む
静岡県には静岡市と浜松市という二つの政令市があります。県計の数字ひとつで採用母集団を語ると、実際の採用活動とずれます。

職種ごとに見るべき学校種が変わる
浜松市側は輸送用機械(自動車・二輪)と楽器の集積があり、工業高校や専門学校からの技能職採用の比重が高くなります。静岡市側は県庁所在地で、事務・営業職や行政関連の受け皿が厚い構成です。富士市は紙・パルプ関連、焼津市は水産加工、県中西部には茶業があります。業種によって「どの学校種を母集団として数えるか」が変わります。
| 採りたい職種 | 主に見る学校種 | 注意点 |
|---|---|---|
| 技能職・製造現場 | 高等学校(工業系)・専門学校・高等専門学校 | 高専は全国でほぼ横ばい。母数が小さいので競合が激しい |
| 設計・技術職 | 大学・高等専門学校 | 県外大学からのUターンを別枠で見積もる |
| 事務・営業職 | 大学・短期大学・専門学校 | 短期大学は減少が続くため単独の柱にしない |
| 食品・農水産加工 | 高等学校(農業・水産系)・専門学校 | 学科単位の数字は県の報告書で確認 |
この表は職種と学校種の対応を整理したもので、学校数や人数を示すものではありません。実数は必ず県の報告書かe-Statの該当表から取ります。
Uターンは学校基本調査では追えない
県外に出た学生のUターンは学校基本調査では追えません。学校基本調査が数えているのは「どこの学校に在籍しているか」「卒業後どの進路に進んだか」であって、「どこの県に就職したか」は別の統計になります。ここを混ぜると資料の前提が崩れます。
生成AIに任せてよい作業と任せない作業
統計を扱う資料づくりで生成AIを使うときは、線をはっきり引きます。

任せてよい作業
任せてよいのは、すでに手元にある数字の整形と説明文の下書きです。e-Statから落としたCSVの列を並べ替える、県の長期時系列から必要な年だけ抜いた表に見出しを付ける、出来上がった表について社内向けの短い解説を書く。こうした作業は下書きとして十分に使えます。
任せない作業と入力しないもの
任せてはいけないのは、数字そのものを生成AIに言わせることです。「静岡県の高校卒業者数は何人か」と聞けば、もっともらしい数字が返ってきます。しかしその数字がどの年度のどの調査のものか、速報か確定値かは保証されません。採用計画の前提になる数字は、必ずe-Statか県の公表ファイルから自分で取ります。
もうひとつ入力しないものがあります。採用候補者の氏名や在籍校といった個人が特定できる情報です。統計の読み方を相談するのに個人情報は要りません。社内の生成AI利用ルールがまだ固まっていない場合は、社内ルールの決め方を先に整えてから統計処理に使います。
採用計画の資料に落とすまでの手順
手順1:数字を確定させる
先にe-Statまたは県の公表ファイルから必要な表を落とします。このとき、調査名(学校基本調査)、年度、速報か確定値か、時点(5月1日現在)の四つをメモに残します。後で「この数字どこから持ってきた」と聞かれたときに即答できる状態にしておきます。

手順2:県計と市町別を分けて並べる
県計だけの表と、静岡市・浜松市を分けた表の二枚をつくります。経営会議では県計、事業所ごとの採用計画では市町別を使います。一枚にまとめようとすると、どちらの読者にも使いにくい資料になります。
手順3:出典を表の下に書いてから配る
表の下に「出典:文部科学省『学校基本調査』令和◯年度(速報値/確定値)、令和◯年5月1日現在」と入れます。ここまでやって初めて社外にも出せる資料になります。生成AIに下書きさせた説明文も、この出典行だけは人が確認します。
あわせて読みたい
- 静岡の有効求人倍率の読み方:採用母集団と求人側の需給を合わせて見るときに使います。
- 静岡県の全国順位を資料に使う:県の統計を社外資料に載せるときの整え方をまとめています。
- 令和7年国勢調査の使い方:人口側の前提を押さえたいときはこちらです。
よくある質問
Q. 8月の速報だけで採用計画の資料をつくってもよいですか。
在学者数や学校数を使う範囲であれば速報で構いません。ただし卒業者の進路状況は速報に入らないため、進路に触れるなら前年度以前の確定値を使い、年度を明記してください。令和8年度の確定値は令和8年12月に公表予定です。
Q. 静岡県の市町別データはどこで見られますか。
県の報告書に市町別学校数、児童生徒数、教職員数、卒業者の進路状況などが掲載されます。公表は12月です。最新年度より前のデータであれば、e-Statの学校基本調査からも取得できます。
Q. 県の長期時系列と全国値のどちらを資料に載せるべきですか。
両方載せるのが安全です。全国値だけだと県の事情が抜け、県値だけだと「それは全国的な傾向なのか静岡固有なのか」が判断できません。同じ学校種で全国と県を並べると、話が早く済みます。
Q. 大学生の数を県別に知りたい場合はどうしますか。
静岡県統計センターは、大学については文部科学省が直接調査結果を公表しているとして、e-Statの学校基本調査のページを案内しています。県のサイトではなくe-Stat側で探してください。
Q. 生成AIに統計表を読ませて要約させるのは問題ありませんか。
手元にある表を読ませて要約させる使い方は現実的です。ただし要約に出てきた数字は、必ず元の表と突き合わせてください。桁や年度が入れ替わることがあります。個人情報を含むファイルは入力しません。
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参考・出典
- 文部科学省「令和8年度学校基本統計(学校基本調査の結果)速報値を公表します」(2026年8月26日)
- 文部科学省「学校基本調査-令和8年度 結果の概要-」(2026年8月26日公表)
- 静岡県統計センター「学校基本調査」(調査概要・公表予定)
- 静岡県統計センター「長期時系列【静岡県学校基本統計】(項目別)(小学校、中学校、高等学校)」(2026年3月23日公表)
- 政府統計の総合窓口「学校基本調査」(e-Stat)